第3章 謎の特訓…と、遭遇
凛
「やっぱり智晃と私ではこんなにも差があるのですねぇ」
智晃と父が言葉を交わしていると、不意に凛が誰に言うでもなく腕の長さが足りない萎れたトレーナーの袖を広げながら呟く
智晃
「当たり前だろ」
母
「あらあら。ぷかぷかしてて可愛いじゃないの」
洗い物をし終えた母が三人が居るリビングへ戻ってきながら言葉を発する
母
「眼鏡も三編みもないと結構、印象変わるのね」
父
「うん。どちらも可愛らしいね」
凛の雰囲気や丁寧な言葉遣いからか、智晃の両親は彼女の事を気に入っているようだ。
凛
「ありがとうございます。嬉しいです」
凛は自分の髪を軽く触りながらお礼を述べ、それを見ると智晃は立ち上り、リビングから出て行く
父
「どうしたんだ?」
母
「さぁ…?」
三人で首を傾げていると、戻ってきた智晃の手にはドライヤーが握られていた
智晃
「凛、風邪引くといけねぇし使えよ」
凛
「………。では、お願いします」
智晃
「は?」
母
「まぁ」
父
「おぉ」
その言葉に三人がそれぞれに反応を見せる。
どうやら、凛は智晃に髪の毛を乾かしてもらおうとしているらしく彼に背中を向けた
智晃
「いや、自分でやれよっ」
父
「良いじゃないか、やってあげろ」
母
「そうよ、そうよ!」
智晃
「はぁ?」
智晃は悟った。
この雰囲気は絶対に断れない、と。
智晃
「はぁ……わーったよ」
観念した智晃は凛の背後へ立った