第3章 謎の特訓…と、遭遇
凛
「回ったの初めて見ましたが、回すのではなく動かすのですよ?」
智晃
「~~~っ!わーってるよ!」
凛からの指摘に智晃は分かりやすく頬を紅潮させて恥ずかしさを紛らすように怒鳴る
― 二時間後 ―
智晃
「はぁっ…はぁ…っ」
膝に両手を当てて肩を大きく上下させながら荒い呼吸を何度も繰り返す智晃の額から滴り落ちる汗が、魔法にどれだけの体力と精神力が必要なのか物語っている
それを、何か言うでもなく凛は静かに見守っていた
智晃
「くそ…っ、ぜってぇ…動かしてやる…っ」
そう一つ呟いた智晃は額の汗を腕で乱暴に拭うと、またネジへ掌を向ける。
すると…
ネジが小さな音をたてて僅かに右へ動いた。
智晃が、ばっと顔を凛の方へ向けると彼と同じように彼女もまた驚きつつも嬉しそうに口を開けていた
凛
「素晴らしいです。…少し休憩にしましょうか」
智晃
「おう」
近くにあった今にも壊れそうな二脚の椅子に二人で腰を落ち着け、智晃は凛から貰ったお茶をごくごくと喉を鳴らして飲んだ
凛
「今の感覚を常に意識できれば自然と出来るようになります」
突然、言葉を吐き出した彼女へ首を傾げて問う
凛
「“何の為に使いたいか”の感覚です。先程は“絶対に動かす”というちゃんとした意思を持っていたので、動きました」
成る程、と智晃が納得していると次いで凛が口を開く
凛
「ムキになってもらえれば動かせると思ったのですが…。だからと言って、嫌いな方に無理矢理な形で魔法を使わせてしまい…すみませんでした」