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彼岸花を抱いて

第12章 断らない探偵事務所




智晃
「迷子って…こんなにいるんだな」


「そうですね。可哀想です」

凉晴
「…………」

智晃
「なぁ、腹減らないか?」


背凭れに頭を預け天井を見上げながら智晃は唐突に声を掛けた。
その問い掛けには凛ではなく凉晴が珍しく先に声をあげた


凉晴
「……減ったな」

智晃
「だよな。俺何か作るよ。キッチン借りるなー」


凉晴の声に智晃はばっと背凭れから身体を離して笑った。
それから、鼻唄混じりに一階にあるキッチンへと降りていく





智晃
「へー、意外とちゃんとしたキッチンだな」


キッチンへと入り腕捲りをしながら智晃が呟く。
どこか生活感のない二人にしてはしっかりと生活感のあるキッチンだったため思わず溢れてしまった


智晃
「失礼しますよ、っと」


二階に居る家主へと聞こえる筈もない声をかけてから冷蔵庫を開くと智晃はこれまた驚いた。
不自由のない食材や調味料の数々に彼等がちゃんと生活し、このキッチンを使用しているのだと理解できたから

あの二人なら…特に凛は全て魔法で解決してしまいそうな空気が漂っているため、そう考えてもおかしくないだろう。




「凉晴ですよ」

智晃
「おわ…っ、何だよ…凛。びっくりしたじゃねーか」


「驚かせてすみません」



二階に居る筈の凛の姿がキッチンの入り口にあれば、思い切り智晃は驚いてしまった。
そして、掛けられた言葉はまるで智晃が考えていた事が唇から溢れていたのではと勘違いするほど的確に誰なのかを教えてくれた



智晃
「凉晴がって、飯作ってんのがか?」


「はい」

智晃
「凛は面倒臭がりだもんな」


彼女は何でも率先してやるように見えるが、意外と面倒臭がりな一面があるのを一緒に過ごしていくうちに知りそれを思い出し小さく笑いながら智晃が告げると
凛は心外だとばかりに唇を尖らせ



「私だってたまには作りますよ」

智晃
「そうかぁ?…ま、けど凉晴がやるのにも驚いたな」


「手書きなんですが、お料理の本があるみたいでそれを見てやっています」



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