第11章 不思議少女の抱えているもの
母
「凛!私たちは無事よ、落ち着きなさい」
父
「凛。…戻ってくるんだ」
凛
「あ…あぁ…う、い…」
両親の声は届いていないのか、瞳への闇の侵食は進行していて
これではまずいと思った両親は二人で凛を包み込むように強く抱き締めた
母
「凛…私の可愛い子、大丈夫よ。私たちは此処にいるわ」
父
「嗚呼、大丈夫だから。戻ってこい…凛」
凛
「あ…ぁ…と、さま…か…さま…?」
すると、唸り声をあげていた凛が漸く…言葉を取り戻した
母
「……っ。そうよ、父さんと母さんよ」
父
「ちゃんと分かるか?」
凛
「……父様…母様…は、ぁ…」
凛が元に戻ると龍のような黒い渦がなくなり、彼女の瞳もサファイアブルーに戻った。
それには、両親だけでなくディガットもルティナスも安堵の息を溢した
凛
「父様、母様……良かった…」
母
「愛しい子よ…おかえり、凛」
凛
「ただい……ぐ、ぁ……離れ、て…あぁ…っ!」
戻り穏やかに笑っていた筈の凛が急に苦しみだした…かと思えば彼女の胸元から小さい龍のような黒いものが現れ
父
「何故また…!」
そしてその龍は…彼女の意思とは別に─…
父
「うっ…!」
母
「あなた!……あ…っ…!」
凛の両親の身体を貫いていた…。
ディガット
「……凛…君はまだ此方に来るべきではない。落ち着くんだ」
ディガットが掌を凛の額へ翳し、魔法とは違うものを詠唱すると…彼女の身体は淡く光だし、漸く意識を取り戻した