第11章 不思議少女の抱えているもの
振り返った大きな人物は涼しげな瞳で凛を見下ろし、一歩近付くと凛と視線を合わせるようにしゃがみ込んだ
?
「泣くな」
凛
「へ……」
短く告げられるそれと同時に彼の親指が凛の涙を優しく拭っていた。
怯えていた凛だったが、少し余裕が出来たのかその人物の自分にはない異物を眺めた。
彼の頭部には二本の湾曲になった角が生えていて、ゆるくウェーブのかかった深い赤髪が良く映える白肌をしていた
ディガット
「我が名はディガット。いずれまた会おう…我の愛すべき者よ」
そう言うとディガットは風と共に姿を消した。
それが、破壊神ディガットとの出会い─…
そして、もう一つの出会いはその日から一ヶ月後に訪れた。
凛と母が二人で少し遠い店に出掛けた時だ。
凛
「………」
母
「凛?それ…気に入ったの?」
ふらっと立ち寄った店で見掛けた、凛の指には大き過ぎる指輪を食い入るように眺めている幼い娘を見て微笑みながら優しく声を掛けた。
すると、凛は驚いたように顔を上げて少し迷ってから首を横に振った
母
「あら、どうして?」
凛
「だってこれ…母様みたいに綺麗な大人が着けるものだから」
幼い唇から溢れ落ちる言葉に愛しい気持ちが込み上げ、母はしゃがむと頬を優しく撫でた
母
「ありがとう、凛。…でもね、我慢しなくて良いのよ。いつも良い子でいる必要はないわ…我が儘を言ったって凛は可愛いもの」
凛
「………じゃあ」
母
「なぁに?」
凛
「この指輪…欲しい」
きゅっと着ているワンピースの裾を小さな両手で握り締めながら告げる凛に母は、勿論と笑みを浮かべてその指輪を買った
それから、少し歩いた所で見付けた露店の商品を母が見ているのを後ろで待っていた時…
嬉しくて店を出てから着けた指輪は、やはり大き過ぎて坂になっている草むらに転がってしまい凛は慌ててそれを追い掛ける