第11章 不思議少女の抱えているもの
凛の両親は国の長として民達からとても慕われている、心の優しい二人だった。
そのため彼女達の誕生は両親だけではなく、国の民にも幸せをもたらした。
祝福の空気で国中は充満し、皆が笑顔だった。
だが、後に凛は両親や国民だけでなく創造神や破壊神…悪事に心を染めた者達にも好かれる事となる。
彼女の周りには…常に危険が迫っていた─…
彼等との出会いは凛が幼い頃だった。
その日、両親は不在だったため妹の由來(ユラ)と湖に遊びに来ていた。
由來は髪が長い凛とは違い、顎より少し長めのストレートボブで性格も姉とは異なり少々短気な所があって人見知り。
姉妹が仲良く二人で遊んでいると、セレナイト族ではない種族数人が幼い二人へと薄気味悪い笑みを浮かべながら近付いてきて慌てて凛は由來の前に出た。
男
「こんな所に子供二人で来るなんて危ないなぁ?」
凛
「こ、此処はセレナイト族しか来ないのっ。何で貴方達が…いるの…!」
男
「入っちゃいけない…なんてルールないだろ?」
首を傾げる男の笑みは父親とは違い怖くて寒気がするようなもので、凛は思わず小さく震えた。
だが、一人の男が凛の後ろで怯えて動けない由來に手を伸ばすと凛は慌てて大きな手を微力魔法で弾き小さな両手を広げた
由來
「お姉…ちゃん……っ」
凛
「私はっ…お姉ちゃんだから、由來を…守るの…!」
男
「泣かせるねぇ…でも、子供の君に何ができるのかな?」
大きな目にいっぱいの涙を溜めながら弱い魔法で抵抗し続けるも後退りをしすぎたせいか、大きな木に当たってしまい…
伸びてくる手にぎゅうっと目を瞑ると大粒の涙が溢れた
凛
「や、ぁ……いやぁ──…!」
小さい身体に覚悟をした生を終える痛み。
だが、その痛みは訪れず代わりに耳を劈く様な断末魔の叫びが聞こえて恐る恐る目を開けると視界を覆う様に広い背中が見えた
凛
「だ、れ……?」
弱々しく細い声を出すので精一杯でさっきの声が誰のだったのか、どうなっているのか…考える余裕が凛にはなかった