第2章 不思議な転入生
【智晃 side】
智晃
「…何だよ」
凛
「見たいです!是非見せてくださいっ」
智晃
「何でお前、嬉しそうなの…」
自分でも分かるくらい顔をひきつらせながら前のめり気味の彼女へ視線を送る
凛
「直したいのに壊してしまう方なんて見た事ありませんから!見てみたいんです!」
何だよ、こいつ…。
そんな感想を持っていると、彼女は持っていた小さなケースから懐中時計を取り出して俺へと差し出してくる
凛
「これ、直そうと思ってずっと忘れていた物です。直してくださいませんか?」
智晃
「いや、だから…」
凛
「あぁ、本当に直らなくても良い物なので気にしないでください」
ふわりと微笑む彼女に、何を言っても通じない気がして諦めて掌にある懐中時計を手に取る
智晃
「本当に壊れても知らねぇからな」
一度、彼女へ目を向けるがもう俺の手元しか見ていないので懐中時計を握り締め、それに集中する
智晃
「トゥナルーヤ」
直す呪文を詠唱し掌を開き様子を窺っていると
少しだけ間をおいて、ぼふっと黒い煙を懐中時計が吐き出した
智晃
「ほらな?言った…ろ…って」
凛
「わぁ…!本当に壊れてしまいました!凄いです、初めて見ましたっ」
智晃
「いや、だから何で嬉しそうなの…」
凛
「ふふっ、ありがとうございます」
彼女は揶揄っているとかではなく本心から喜んでいるらしく、目尻を垂らして嬉しそうに手を叩いていた
智晃
「ふっ…はは、変な奴」
気が付けば俺は声を出して笑っていた。
本当に変で不思議な奴だ…魔法が使えないなんて、この世界じゃ馬鹿にされる対象でしかねぇのに