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彼岸花を抱いて

第2章 不思議な転入生





「リヌーバ」



会話が一度止まり二人の間に静かな風が吹いた時、不意に凛が掌を扉へ向け小さく呟くとかしゃんっと音をたてて施錠される。




「魔法は嫌いですか?」

智晃
「え?」


「今、嫌そうな顔をしていましたので」



彼は気が付かなかった。
無意識にでも拒絶反応なのか、顔を歪めていた事に



智晃
「あ、いや……まぁ、そうだな。嫌いだ」


「……理由をお聞きしても?」



まさか、理由を聞かれるとは思っていなかったのか少しだけ戸惑ったようにしたが、隠す必要も特に思い付かなかった智晃は凛の隣へ腰掛けて口を開く



智晃
「大した理由じゃねぇんだけど…俺は、魔法を使って誰かを傷付けたりする奴が嫌いなんだ。何かを盗んだり、ちょっと魔法力が上だからって見せびらすみてぇに悪い事してよ。…アホくせぇ」



この世界には魔法が存在していて魔法を使えるのが当たり前。
朝起こった事は然して珍しい事ではない
人間がこの世界で一番、底辺にいるのも珍しい事ではない。


ここで暮らす人間は実際に見た事が無い者が多いが、空の上には彼等とは違う沢山の種族が生活を築いている。
彼等は人間とは比べ物にならない程の魔法力…
つまり、魔法を使えるのに必要な力の格が違うというわけだ。
ちなみに魔法力には階級があり
高等級、上等級、中等級、下等級と、四つに分けられ人間は一番下の下等級。



だから、人間の中で多少は魔法力が上であっても彼等から見たらどんぐりの背比べという事だ。





「だから、魔法を使う気はないと?」

智晃
「ねぇな。…それに、俺にはセンスがねぇ」


「何故です?」

智晃
「さーな。嫌ってるからじゃね?とにかく、唱えた事と違う事がおこる。直してぇのに壊しちまったり」


「………」



何故か眼鏡の奥に住む大きくて丸い目を輝かせて智晃を見ている凛と視線が絡む



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