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彼岸花を抱いて

第10章 新米探偵に依頼あり




凉晴
「凛は……一度、壊れたんだ」

智晃
「は…?」



壊れた?壊れたって何だ?
今の凛は別に壊れてるとこなんて無いだろ。
何を言っているのか理解できなくて俺は先を促すように凉晴を見た



凉晴
「セレナイト族は貴重な種族だ…けど、その中でも凛は特別な存在だった」

智晃
「特別?」

凉晴
「嗚呼。凛は創る事も壊す事も出来る素質を持って産まれた…簡単に言ってしまえば善と悪だ。その為、創造神にも破壊神にも好かれ…悪事を働こうとする者にも狙われた」

智晃
「…凛の周りは…本当に危険ばっかなんだな」

凉晴
「創造神と破壊神は基本的には無害だ。悪事を働こうとする者からも凛の両親は守っていた…あの事件までは」

智晃
「事件…って何だ?それが凛が敬語なのには理由があんのか…?」


敬語になっているのはそれなりの…俺が予想しているよりも深い事情がある、って事か。
俺の問いに凉晴は視線を泳がせ、遠慮がちに口を開いた



凉晴
「凛の両親を誘き寄せる為に奴等は…凛を誘拐したんだ。だが実際は…」






【NO side】





「何だか薄暗い場所ですね」


「とっておきの場所へ君を案内するよ」


場所を移動した二人はきらびやかなホールから離れ廊下をゆっくりと進んでいた。
その途中で明らかに此処へ来た女性客とは様子が違う女性を見掛けると、零へ視線を向け



「彼女は?」


その問いに少しは躊躇いや言いにくさを感じ表情が崩れるかと思えば、彼は今まで通りの柔らかい笑顔と声色のまま…



「これから売られに行くんだよ」


「人身売買…ですか」


「そうだね。けど、君は向こうじゃない…私のコレクションになるんだ」



故郷でも聞き覚えのあるワードに凛は小さく溜め息と言葉を吐き出した



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