第10章 新米探偵に依頼あり
智晃
「本当に食いもんか?これ」
凛
「ふふ、ちゃんと食べられますよ。はい、あーん」
凉晴
「………」
皿を片手に食べやすくカットされた上質なミディアムレアのソースがきらきらと光るステーキをフォークに刺し智晃の口元に笑みを浮かべながら差し出す凛に思わず智晃は固まった。
彼女の笑顔とは対照的なのが凛の後ろに立っている凉晴の鋭い視線が智晃を刺した。
凛
「食べないんですか?…ほら、口を開けてください」
智晃
「………っ」
また、にこっと微笑まれて催促されれば凉晴の視線は気になったが、唇を開き芳香を放つそれを咥内へ含んだ。
智晃
「ちゃんと美味いん、だな」
凛
「それは良かったです。…でも、智晃のお母様の食事の方が美味しいですね」
自らの食器を手に智晃と同じ物を口に含んだ凛がそう言葉を向けたため、智晃は素直に頷いた
凉晴
「凛。…来たぞ」
こっそりと告げられたそれに凛はテーブルに皿を置き、凉晴の視線の先へ目を向ける
僅かにかかる前髪から覗く切れ長な目が印象的な30代半ばと見られる男性からは紳士的な雰囲気しか感じ取れない。
その男性を二人は観察をする。
ちなみに智晃は余計な視線を向けてバレては困る、と言う事で食べ物を取りに行かされた
凛
「間違いなさそうですね。…どうやって接触するか、ですね」
凉晴
「そうだな…って、あいつ」
凛
「え?…あら」
二人の視線の先には欲張りにも皿を沢山、持っている智晃の姿が映った
凛
「凉晴、行って頂けますか?」
凉晴
「はぁ…仕方ない」
彼が大きく溜め息を溢しながら智晃の元へ向かうのとほぼ同時に先程まで観察していた男性が凛のテーブルへとやってきた