第3章 一章
次の日、評議会第一席の司瑛士はいつにも増して気落ちしていた。
評議会の秘書を勤め、彼の恋人でもある水志神菜は昨日大怪我をして帰っていった。
その事を心配してるのもある。が、その大怪我にかこつけて、見舞い口実に評議会の役員の大半が執務放棄してしまった。
見舞いに行くなとは言わない。が、そのツケの全てを自分に押し付け、恋人である自分を差し置いて行くとかどういう了見かと、物申したいが、その連絡自体もメールで送信され、電話も繋がらない。
仕事放っておいて自分も行こうかとも思うが、その結果、首が締まるのは最終的に自分なのを理解していた為泣く泣く仕事をせざるおえないのである。
せめて早く仕事を終える為に早めに学校に来たが、深い溜息と共に執務室の扉を開ける。
「おはよう」「チワーッス」
「・・・・・・・・」
目の前には書類整理を行ってる自身の恋人と彼女の友人がいた。
「えっ!?どうして?なにして」
昨日見た外傷は米神とはいえ相当な出血だったし、病院に行くだろうし今日は来れないだろうと思っていた。
そんな彼女が額に包帯巻いた状態で書類整理をしているのだ。驚く。
「何って、書類整理だよ。昨日は顔見せに行ったきりで出来なかったから」「何であたしまで」
問いかけにキョトンとした顔で応える神菜と文句を言いながら黙々と判子を押す折敷。
「びょ、病院は?」「行く訳ないでしょ。血は止まったし、縫う様な傷じゃないし、私、病院嫌いだもん」
「まっ、別の理由で二人仲良く病院行きそうになったけどな。
・・・・飲み物買ってくるわ」
乾いた笑みを口元に浮かべて、遠い目をした折敷が言った。
「あ、アキちゃん。私もアセロラジュース」「おー」
そのまま折敷が出ていくと二人きりになる。
「本当に大丈夫なのか?」指の腹で包帯に優しく触れる。かなり分厚い気がするのだが
「血が滲まないように多めに巻いてるだけだよ。」
自分の手に重なるように彼女の手が触れる。
「ご飯食べた?食欲は?」時刻は六時を差していた。
「あるにはあるけど食べなかった」
重なる手がいつもより少し熱く感じる。唇で触れるとやはり普段より体温が高いようだ。
「お粥でいい?」
「朝からお粥で食べる気がしなかった」
「味気ないもんね」「鉄の味がした」「え?」