第3章 一章
促された上背の男が神菜を背負った状態でまず門をくぐり、そのまま二人が続く。
門の奥はオガタマの木が整然と植えられ、石畳の道を取り巻いている。
まるで鳥居の様だ。
「立ち話も何だし、上がってく?」
やんわりと笑顔浮かべて問いかけてくる昔からの知り合いとその彼が抱きしめている幼子は先程まではこちらを物珍しげに見ていたが、皆が入っていた道の先をジッと見ていた。
「いや、まだ学校でやらなきゃいけない仕事があるんだ。車も待たせてるし、神菜の具合も悪そうだし、また今度な」
「そっか、ごめんね。それと、ありがとう」
少し残念そうに、しかし、どこか安堵した様な複雑な表情をして、車へと戻る竜胆を見送った。
車に付けられたバックミラーから二人が見える。彼らは車が見えなくなるまでこちらを見ていた。
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車が見えなくなるのを確認してから踵を返す門の奥へと目を向けると古く、鄙びた建物が見える。人が住むには小さく庵の様な建物
神菜達が暮らす本丸はここであってここではない場所にある。人はそれを神域又は隠り世などと様々な呼称でいう。勿論、現世で生活する上で必須となる書類作成用に使う住所などは政府の方で用意されてるから心配はない。
「さて、戻ろうか」
光忠がそう言って鳥居をくぐるとそこには広い平面が続く整地され畑と大きな屋敷があった。
「隠り世じゃなきゃ、特別本丸なんてできないもんね。」
と誰に言うでもなく一人呟くこの本丸一番の古株であった。
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米神に走る鋭い痛みに耐えながら目を開けると見知った天井が目に入る。
「あ、起きたんだ。具合はどう?」
「ん、家に帰ったからか大分良くなった。ただいま」
起き上がって元気な様子を見せようとするものの、男は手でソレを制す。
「あんまり無茶しちゃダメだよ」「うーん、今回は私のせいじゃない気が・・・いっつ!?理美、あんま触らないで、っ、そうだ、負傷者がいるから、手入れの準備しておいて」
男の腕にいた小さな女の子が腕から降りて神菜の頭を撫でる。
女の子なりの労り方なのだろう。
「うん。わかった。」
苦笑混じりに答えると男は部屋を出て行く。
「今日はおかゆにしようかな」