第4章 ドキドキ!?宿泊研修。えっ!3年生だから参加しませんよ?
「ただいま~、あぁー、疲れた。」
あの後いくつかの本丸に行き資料やら、説得やら、ついでに噂やら近況報告をしていたら、随分時間がかかった。
「お疲れのようだが、まだやる事が残っている事を忘れないでおくれよ?」
「勿論です。が、うぅ~、気が重い」
ついでに体の節々が緊張と堅苦しい服で硬直している。
一刻も早く、この重苦しく動き辛いものを脱ぎ、ひと心地つきたい。
玄関で近侍兼今日の護衛の歌仙兼定の肩を借り、履物を脱ぎ、廊下を歩く。
そういえば、お客様はもう帰ったのだろうか?帰ってないなら不本意だが、それはもうかなり、不本意だか、泊める為の支度がやる事リストに追加される。
「もう、いっそのこと全員玄関に放り出してしまおうか」
「フフフ、おやおや、随分と物騒だね。」
まだ、いるとも知らない友人達の対応について考えるのが些か面倒になり全てを文字通り放り投げようとした時、背後から聞こえる声とは別の軽やかな笑い声。
縁側の方に出てみれば、庭先で焚火を囲み、以前に試供品として政府から戴いた何に使うのか全く分からない花火玉………を打ち上げていた。
「おぉ〜、あははは、すげーなぁ、たーまやー♪」「かーぎやー」
「ふむ、春の花火も中々乙なものだな」「と、いうより」
「何であるんすかね」「知らねーけど良ーじゃん…ねぇ折敷セーンパイ♡」「まだいっぱいあるんだし、やっちゃえやっちゃえ」「いや、あの本当に大丈夫なのかな?怒られない」
「……水志が見たら卒倒しそうだな」
BGMが頭を素通りする。怒りたい気持ちと呆れと、
夜空を彩る遅咲きの桜と花火の共演が綺麗だなぁ、とか
理美が目を輝かせて空を見て笑ってる顔、可愛いなぁとか、なんか色々過ったけど全部素通りする。
中庭の光景から目を逸らせず立ち止まっている。
背後にいた歌仙兼定が労うように肩を優しく叩いてから廊下の先へと消える。
恐らく、泊まれる様に支度をしにいってくれたのだろう。
やる事が一つ減ったが、
なんか、
もう、
疲れた。
叫ぶ気力すら沸いてこず、ただ茫然と縁側で座り込み、中庭を眺めていた。