第3章 一章
「すまない、薬研藤四郎。」「気にすんな。巴のダンナ。それより乱、大丈夫か?」「う、うん。何とか。」
打ち付けた頭が痛むのか少し起きにくそうにしている。乱藤四郎に手を貸す巴。薬研は懐から手当の道具を出して、準備をする。
「でも、どうして薬研が?ここに」「大将に呼ばれたんだ。奴さんの一人が奇襲かけて来たらしくてな。俺っちがお前らの治療も兼ねてこっち来たんだ。」「何だとっ・・・」
すぐに主人の元に馳せ参じようと体を動かすが薬研が止まる。
「俺がきっちり落とし前つけてきたから安心しろ。先ずは手当してから向かうぞ。大将から言付かった要件がある。心して聞け。」
薬研藤四郎がテキパキと処置を施しながら手短に話す。
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そして、それから少し経った頃。
評議会室の扉が控えめにノックされた。
近くにいた。紀ノ国が扉を開ける。
「おう、邪魔するぜ?」
黒く癖のない髪の紫苑の花のような薄い、灰色がかった紫色の瞳。背は若干低く、 色白で落ち着いた雰囲気のある少年。
年は自分達より年下でおそらく中学生だろう少年は砕けた口調で挨拶してきた。
「ん?誰、そいつ?誰かの弟君?」「というより誰だ。制服着てねーし、思いっきり部外者だろ。」「ん?」
机から顔を上げた人達が皆、入ってきた人間に目を向ける。在るものは、好奇、不審の。
「あっ、君がお迎え?」入って来た人物に面識がある折敷が声をかける。
「おう、悪りぃが大将の机物色するぜ?」
そう言って水志の机を開く。
「知り合い?」「神菜ん家の同居人だよ。珍しいね。妹さんのお守りじゃないの」「だったんだが、大将怪我してるってんで俺が呼ばれた。おっ、これだな。ったく、そそっかしいなぁ」
封筒を見つけて、中身を確認する。
「んじゃ、また後でな」そのまま出て行こうとする少年を呼び止める。
「ちょいちょいちょい!一緒に行くっての!?」
「ん?」「ここに来たこと無いでしょ?迷うから、案内するよ。」
そう言って、書き終えた書類をまとめて立ち上がる。
「校内は原則学校関係者以外立ち入り禁止です。」
紀ノ国が声をかけると少し考えるような素振りをしてから
「メンドーだな。まぁ、そういうことなら頼むわ。嬢ちゃん」と笑った。