第3章 一章
(この辺は異常なさそうだね)
不穏な気配を察して主の元を離れ、校舎を見て回ったが、気配に近づいては消える。その繰り返しであった。
(が、瘴気が充満しているな。ひとの集まる所はモノが集まる故、無理はないのだろうが)
(それにしたってちょっと多すぎると思う。あ、そっちは行かないでアキちゃん達いるだろうから、見つかったら叱られる。)(一時帰還するべきかもな。あまり主のそばを離れるのもよくはない)
・・・・・
・・・・・・・・
「ん?」
書類整理の為、手伝いに来た折敷が机から顔を上げ、そのまま扉を開けて廊下を見渡す。
そのまま不思議そうに首を傾げて扉を閉める。
「明紀、どうした?」「いや、誰か通った気がしたから、気のせいか」「それは無いだろう。今日は休日。書類を取りに来る職員も休みのはずだ」
それなのに書類整理が滞っていて休日出勤させられる生徒がとても哀れに思う。
「それに、今日は件の編入生が食戟をする日とかでこっちに来る生徒はいないと思うよ」
「編入生って、あー、確か極星寮の子かぁ。あれ、今日の食戟って確か丼研の勝負だけじゃ・・・」
「なんか巡り巡って編入生が食戟する事になったらしいよ今年の一年は活気があっていいね」
「ふーん、まぁ、時間が空いたら観に行こうかな」
「・・・・空けば、ね」
未だ各机に積まれた大量の書類を見上げる。
「はぁ、これ午後までかかりそうだな」
「なぁなぁ、ちょっと買い出しに行っていいか?」
「竜胆、そのまま逃げる気でしょ?」「バレた?」
「折敷」「ウィッス」
扉の前に陣取り外出禁止とばかりに態度で示す。
「わりぃ、わりぃ、冗談。冗談だって、ジョーダン」
悪びれもなく笑う竜胆に一同呆れながら作業に戻る。
折敷もそれを確認してから再び、扉を少し開けて廊下を見る。
やはり何もない。戸を閉める一瞬、生暖かい風が吹き抜けたが、気づくことは無かった。