第3章 一章
(主よ。西の方から不穏な気配を感じる)
「(時間遡行軍?)」(わからない。けど調べた方がいいと思う)
髪留めに少しだけ霊力を込める。そばにいた二人の気配が無くなる。
ふと幸平創真がこちらを見る。ニコリと微笑むと少し怪訝そうにまた元の姿勢に戻る。
勘が鋭いのだろう。部室に入った時も二人の気配に気づきそうになっていた。
霊感の類はなさそうだ。が、人には第六感があるとされている。そういったものは時折危機回避の為こうして一時的に異形のものを見る術に変わることがあると聞く。
巻き込みたくないなぁ。
そんな事を一人考えていると食戟の開始の声が聞こえ、三人がステージへと進む。
三人が、と言ったのには訳がある。神菜はステージには立たないからである。三人とも渋い顔をしたが、そもそも、部室の修理に来ただけで自分はほぼ部外者なのだ。試作の協力も一切してない。そんな人間がステージに立つ必要性も理由もない。
と、言ったのだが
「何故こうなった。」「す、す、すんません!!余りの観客の多さに」「ひ、ひいぇぇええ!??」
対戦相手と打って変わって、多くの観客から汚いヤジとブーイングの嵐を浴びる幸平創真。
ベンチ2人は恐怖と本能を駆使して日和見を決め込もうとした神菜を引っ張り出して共にステージに上げさせた。
「まぁ気弱な田所さんは仕方ないとして、大の男が女の背中隠れるってどうなの?本来なら小西さんが食戟受けるはずだったんだからもう少しビシッとしなさいよ」
「う、うゔぅ・・・」「ほら、堂々となさい。もっと威厳を出して・・・って威厳なんかなかったね。とりあえず先頭いって、仮にも部長なんだから」
恐る恐る前に出る小西だが、すぐに幸平に向けて野次が飛んでくるとすぐに神菜の後ろに隠れてしまう始末。
とはいえ、編入してそこまで時間は経っていない筈なのだが全校生徒から恨まれてそうな程の野次の嵐。その上、VIP席を見上げると多忙を極めている総帥の孫娘まで。
「ねぇ?幸平さん何やらかしたんですか?」「いや?挨拶以外何もしてねーすけど」それなら何で?と思う。
まぁ編入生というのも珍しいから珍獣扱いされてるのだろう。と、無理矢理納得しておこう。