第3章 一章
『主、敵影を見つけた。』
引き連れてきた刀剣の報告を聞いたのは、会場内にバターと肉の焼ける匂いが漂い始めた頃、
目を閉じると、巴形薙刀の目を通じて敵の姿を確認する。数は短刀二振りと脇差が三振り、二振りの様子を見る。軽く負傷しており、服もところどころ裂けてる。
背後を取られたと見た。
(援軍を呼びますか?)
『敵は複数いるとはいえ、こちらは薙刀。遅れは取るまい』
『僕も大丈夫。けど、時間がかかりそう。』
目を通じて周りを見るとそこは屋内。時間をかけて倒すには些かまずい場所。
(評議会室に結構近い場所ね。今そちらに向かいます。数を減らしつつ、出来るだけ、屋外に誘導なさい。)
了承の意を確認してから再び目を開ける。
少し照明の明るさに目を細める。
しかし参った。ああは言ったが、後輩二人が自分の背後に隠れていて身動きが取れない。
何とか離れる口実が欲しい。
そう思っていると会場内にいる人たちが食い入るように。と、いうより、茫然と目線を向けている光景がある。釣られて目線を向けると幸平がいた。
彼の手には昨日小西が買ったであろう、近場のスーパー徳用で売られた。しかも見切り商品で通常値より半額になった安物サーロイン肉があった。
確か手渡した金額は5000円程度。お釣りはまだ返してもらっていない。
小西君、君、ネコババするつもりかな?
少し苛立ち混じりに小西を見つめる。が、当の本人は不安そうに幸平を見ている。
常日頃から食材についても高級なものほど良いと指導を受けている生徒達にしてみればこんな食材出てきたら茫然となる。
漸く不審の目に気づいた幸平が口を開く。
「ちょうど特売してたみたいで、ラッキーだったわ」
と、彼等が茫然としていた意図が読み取れずにへらと笑う。
会場内にフツフツとした怒りの感情が湧いて来ているのを感じる。
これはマズイなぁ。そう思って後ろにいた二人を庇うようにジャケットを被せてしゃがませる
「ふざけんなぁああ!!」
誰かの叫び声と共に雪崩のように空き缶や座布団といったゴミや野次が飛んできた。