第3章 一章
「ックシュン!何だろ急に寒気が」
空調を確認するも、室温25度をキープ。寒くはないはずだ。
クシャミはその一回だけで寒気も一瞬だったらしく今は感じない。
気のせいか、知り合いが何か良からぬ事を考えているか、だ。
いや、というより緊張しているのかもしれない。食戟というものがある事は知ってるし己自身も何度か申し込まれた。
己の食戟に対して緊張をした事があるとすれば・・・
まぁ、自分が行うでも無しに緊張するだけ無駄だと思いに至り顔を上げる。
「うわぁ!?あ、あ、あ、あんなに人が」
「俺の学園生活、明日から真っ黒なんだろうなぁ」
食戟を挑むわけでもない人間が落ち着き無く二人揃ってワタワタしていた。なんかさっきまで緊張してると思ってたけど、気のせいみたいだ。
「はいはい。二人とも落ち着こうね。
大丈夫だって、もう後は運を全て天に任せるしかないでしょ。まぁ元々小西君呂色人生だから負けても気にする事ないって」
「フォローしてくれるのは有難いっすけど先輩は能天気過ぎっす」
「おっ!ナイスツッコミ。それだけ大声出せるんだから大丈夫だよ」ニッコリと笑みを浮かべる神菜を呆れ半分に見る。
「大体なんスカ、ロ色って、それ何色っすか?」「ん?綺麗な深い黒の事」「・・・知りたくなかったっす。」
「幸平さんは緊張してないみたいだね?」
「まぁ、こんだけ周りが騒がしくしてると、何つーか緊張してる暇ないっす」
「そうだね。ほら田所さんも、緊張してる暇なんてないよ。応援するんでしょ」「でも、あんなにたくさんの人の前で料理するとか想像しただけでなんか」
「見られてようが、茶々入れられようが自分がやる事は・・・できることは一つだけ、目の前にある食材を全身全霊込めて調理して食べてくれる人に届ける、でしょ?」
顔を上げる田所の目に神菜は自分の姿をみる。
「私達は料理人なんだから・・・・」
優しく後輩に声をかけるも、心の中では自分を嘲笑っていた。
自分に、料理人を名乗る資格は無いくせに、と。