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幸福のレシピを貴方に。(食戟のソーマ)

第3章 一章


丼研の存亡をかけた食戟開始日の早朝。

緊張からかなかなか寝付けづに朝を迎えた田所は何とか気を紛らわせようと寮の厨房へと足を踏み入れると先客がいた。

「おはよう、創真くん。早いね。」
「おあっ!?何だ田所か・・・って、もう朝かよ」


対戦相手の幸平は、寮の厨房を借りて朝までタレの試作を練っていた,

それは、彼が実家で新メニューを考える際もやっていたので慣れている。寝ないで試作なんてよくある事だ。
しかし、昨日は何故か落ち着かなかった。緊張や試作が上手く進んでいない事への焦りとも違う。
直感的な恐怖、脅迫観念にも似た何かが、昨日、寮から戻ってからも続いていた。 必要な事である以上にそれを振り払うように試作に没頭していた。

「まだ開始時間まで時間あるけどどうするんだべか?」
「あー、一応小西先輩の進捗状況見に部室見てくるわ」

食材は各自がコネなどを駆使して自分自身で仕入れなければいけないのだが、幸平の手持ち金と丼研の部費を合わせても出せる金額は雀の涙よりさもしいものであった。
物好きで変わり者として有名な人らしい。極星寮生でもある三年の先輩。が少し工面してくれたとはいえ食材を揃えて来ているかも心配なところであったので、昨日の一件で気は進まないが、行くしかなかった。



「にしても、この辺は本当に鬱蒼としてるよな」
寮の周りは雑木林のように木々が繁っていて日光も月明かりも殆ど差し込まない。
「だよね。正直昨日は陽が落ちる前に帰れて内心ホッとしてたんだ。昨日は烏の声もしなくて静かだったし」

同級生の言う通り、昨日は不気味な位静かだったのだ。
思わず昨日と違うところはないかと森を横目に見てみるも特にない。

夕焼け空に染まっていた昨日とは打って変わって、日差しが強い為か森自体も鮮やかな緑に輝いている。
花もだいぶ散り初めて来たのか薄紅色の絨毯が所々敷かれている。

そろそろ部室のある別校舎が見えてくる。

昨日と違い、朝日が差し込む校舎は些か塗装が剥げていて老朽化しているように見える。
丼研の部室は確か三階の一番左の側
見上げると窓が開きカーテンが揺れる。既に先輩が来てるようだ。人影もみえる。

「ちわーっす」「おはようございます。」

元気よく挨拶をして部室に入る。
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