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幸福のレシピを貴方に。(食戟のソーマ)

第3章 一章


(アキちゃんには気づかれなかったね)
髪飾りの花の方から声がする。少し高めの年若い少年の声にも女子の声とも取れる口調。


周りには神菜一人、神菜自身が発しているのかと思うも彼女の口は動いていないし、声色を変えるという芸当も彼女は持っていない。

(当然だ。細心の注意を払った故な、)
静かでよく通る無機質な口調の男性の声がもう片方、羽飾りの方から聞こえる。
「して、主、そのがっこうとやらはそろそろ着くのか?」

神菜だけしかいなかった学校のケヤキ並木の道に時代を感じさせる服装の白髪の長身の男がいきなり現れた。木の上に隠れていたわけでもない。何もない空間から一瞬で現れたのだ。

「巴形、昨日も言った通り、必要に迫られない限りは実体化しては駄目よ。あと声も、見えなくても聞こえる人がいるかもしれないんだから」
先程までのそして目の前にいる声の主は護衛についている髪飾りの花と羽に宿った刀剣男士達だ。

(すまなかった)(はーい)


「仕方ない事とはいえ理美には心配かけちゃったなぁ」

明紀には見鬼の才があるものの巴形達が気づかれないよう気配を隠していた為、気づかれなかったが、理美は別だった。
見鬼の才が強く、また、普段刀剣男士達が身につけているものを姉が付けている上、昨日は怪我をして帰ってきた事を知っているからだ。
聡い子だ何かあったのだとわかってしまったのだ。


(仕方ないよ。でも、ちゃんとお留守番するって約束してくれたし大丈夫だよ)(本丸には皆がいる。此方も我らがいる案ずるな。約束もあるからな)

それは、理美がいつもと違う姉に気づいたすぐの事だった。
幼い主人の妹は小さな手で巴形薙刀の着物の裾を掴んで聞いたのだ。

「いい子にるすばんしてれば、ぜったい、ねえね守ってくれる?」
涙に揺れる大きな丸い目を、泣くのを堪えるようにして不安な眼差しを此方に向けて言われた。それは巴形薙刀にとって初めて妹と目を合わせて会話した事柄であった。
「我らにとってもかけがえない大切な主だ。必ず無事に帰還させよう」
力強く応える。それは刀剣達が心から望む事である。しかし、それと同様に、
純粋でひたむきな祈りにも似た願いを聞き届けなければと、あの瞳を涙で濡らしてはいけないと真底思った。
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