第3章 一章
「報告は聞いたよ。有難う。ご苦労様。主は?」
「先程一緒に帰ってきたあと。ちい姫に連れていかれ、今は部屋で休息を取っている」
簡単な手入れは済ませて貰っていたので痛みはない。
刀剣である自分達は刀身が折れない限り手入れをしてもらえればすぐに傷が癒える。しかし、主人は違う。
「それで、俺達だけが集まったって事は政府から何か指令があったって事か?」「あの、なにがどうなって」
今、この部屋にはこの本丸の刀剣男士全員が集められていた。今日顕現したばかりのモノも含めて。事情を知らない者達も戸惑いを隠せずにいた。
顕現して、主の帰還を待っていたら、その主は傷を負い、そして初期刀の歌仙兼定は乱暴な足さばきで審神者の執務室へ入って行った。その後、全刀剣達を呼び集めた。
「大体、この時代には遡行軍は来れないんじゃなかったのかよ!?」
「やめてよ、兼さん。落ち着いて」
「先程、時間遡行軍がこの時代に来た件を話した。無論、主が負傷した事も」
この三日というもの、外出しては死穢を受けていた主。
勿論、皆心配はすれど気に留めなかったが。昨日は怪我を負ったのに気づいた光忠が問い質した。その為今日は主も刀の同行を許可してくれたのだ。
そして、その際主から
『自分を陽動に使い、現れた遡行軍を全員仕留めよ』そう指示された。それが付いてくる絶対条件だった。
この時代は安全。本丸の位置が索敵され、潜入されない限り奇襲される心配はない。
それ故に、この特別本丸と呼ばれる本丸の審神者達は殉職していた。その筈なのに、こうして主は襲われた。
「それで、政府は」太鼓鐘貞宗の問いに忌々しそうに歌仙は眉を寄せる。
「政府は、一刻も早く遡行軍の殲滅を望む。その為に奮起せよ。そう言われたよ。」
それはつまり。
「俺たちの主人をこのまま陽動に使えと」返答はない。それは是という証だった。
「ふざけた連中だな。俺たちに、守るべき、主を見捨てろってか。こんな驚きはいらないんだがなぁ」
「どうにか出来ないのか?光忠。」
「政府は何の援助もしないよ。絶対。僕が言える事は、毎日何振りかは主を護衛。それ以外はとにかく練度を上げる事、それだけだよ」
援助を頼れないならば自分達で守らなければいけない。
「それでは、護衛の人数を決めよう」