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幸福のレシピを貴方に。(食戟のソーマ)

第3章 一章


「ふぅ、厨は何とか直ったね。後は今日中に第三倉庫の雨漏りを直さないと」

この本丸の1番の古株である燭台切光忠は何とか使える様にした厨を見て一度大きく背筋を伸ばす。

『政府直轄特例任務遂行本丸第235支部』それが、神菜が審神者を務める本丸の正式名称でもある。
がその大それた名前とは裏腹に、管理が行き届かず打ち棄てられて久しい雰囲気の廃屋紛いの建物も多い。

第三倉庫はその中でも古い建物だが管理は行き届いている筈なのだがこの間雨漏りし始めて急ぎ修繕が必要になった。

脚立を片手に入ると鍵が開いている。

「??」
あれ?鍵閉め忘れていたっけ?
疑問符を浮かべながら扉を開けると

「わっ!!」「うわわっ!?」

灰桜色の長い髪をした小柄な赤い瞳の少年が視界に飛び込んできた。
驚き尻餅を突いた燭台切光忠をその少年は楽しげに腹を抱えて笑う。

「もう、脅かさないでよ。」


「ここ、おばけやしきみたいですねー。おかげでかくればしょにことかきません」
「これでも采さまが存命の時から舗装やら改装したんだよ?」

他の時代とは異なり時間遡行軍や検非違使などの出現がほとんどないこの区域の本丸は激戦区で活躍する者の中継地として、備蓄や物資保管庫として重宝される。が、それを使う人間は少ない。
中継地から激戦区に出陣して、そのまま本丸ごと消滅なんて事もザラにあるし、保管していた物資が活躍する間もなく朽ち果てる事も少なくはない。
役立たずの本丸。その為政府からの支援なんて殆どない。
先の審神者が政府や上級審神者に掛け合って、各本丸への資材の配給任務や特別任務の演習地として利用してもらう事で生計を成り立ててこうして今やっていけているが、それでも報酬は微々たるものだ。

「さぁ、そろそろ出陣の時間でしょ?初出陣頑張ってね。今剣さん」
「はーい。あ、おひいさまとかくれんぼのとちゅうでした。こえをかけてからうかがいますね」
そう言って軽やかな足取りで下駄を鳴らして走り去る少年。

昼はお目付役を除いて本丸の大半の刀剣が出陣する。

物資にこそ政府から警備をつけてもらえるが、管理を請け負っている者の安全保障は一切無い。

死んだとしてもその程度の人間だったのだと誰も何も言わない。
次の審神者が来るだけ。

だから
「早く、強くなってね」
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