第3章 一章
刀剣達への説教はそれくらいにして、もう一人今日中に怒らねばならない人物がいた。
その人物がいるであろう部屋へと入る。
そこはぬいぐるみや絵本やおもちゃが置かれた部屋で子供の頃はよく神菜も使っていたお気に入りの部屋だった。
そして今は・・・、
「みぃつけた。」
ぬいぐるみに埋もれる様にして隠れていた小さな女の子を自分の目線と同じ高さに立たせる。
目元が真っ赤に腫れ上がっていることから先程まで泣いていたのだろうと手に取るようにわかる。しかし、だからといって今回したことは許すことは出来なかった。
「お姉ちゃん。理美に言ったよね?鍛刀部屋や手入れ部屋に入っても良いけど、お姉ちゃんの大事なお道具があるから、絶対に触らないでって 理美にお約束させたよね?」
唯、 道具に触れるだけならば問題はなかった。と思う。手入れや鍛刀を行おうとしなければ、唯振り回すだけならばバグも起きないのだ。試したくなるのは人の性。しかし、入ってはいけないところを設けたくはなかった。人にもこの家の住人にもまだ慣れてはいない理美を思い我慢を強要するのは極力避けていたのだ。
その結果がこれでは。眉間に皺を寄せると理美と呼ばれた、小さな女の子はまた目から大粒の雫を貯め始めた。
「特に鍛刀部屋は危ないから光忠達が理美が入るのとっても反対してた場所だよ?約束ちゃんと守るって言ったから私は禁止にしなかったんだよ?わかる?」
溢れた雫が一つ、また一つと落ちていく。が、弱々しいながらも頷く。
「なんで約束破ったの?」
その問いに嫌々をするように首を横に振る。その動作に合わせ涙がポロポロと散らばる。
「分からない訳ないでしょ。約束破るのいけない事だってわかっててやったんでしょう」
少し強い口調で咎めるも涙をこぼすばかり。
「泣いてちゃ分からないでしょ?なんで約束破ったのかも、どうしたいかも、理美がどうしたいかも、私はどうしたらいいかも。」
しかし、理美は泣くばかりで何も言わない。
「まぁまぁ、とりあえず落ち着くまで待ってあげようよ。りっちゃん小さいんだし。薬研くん達の処置もあるでしょ?」
見兼ねて光忠が助け舟を出す。睨み付けると少し困った顔する。苛ついてる自覚もあり。深い溜息をつき部屋を出ることにした。