第3章 一章
「なぁ、神菜が何処にいるか本当に知らないのか?」
「だから聞いてないって、あ、でももしかしたら丼研にいるかもな。アイツ、小西のこと可愛がってたし」
丼研と聞き薙切の手が少し止まる。
「ん?丼研って、この間解体されるって言われてなかったか?」
「へー。まっ昨日空調直しに行ってたしその関係かもな。アイツ研究会とか興味ないし、知りたきゃ自分で調べる口だしな」
「それで昨日あんなに怒ってたんだ。」
内心、怒りの矛先が自分に向かないだろうか?と不安を覚える薙切えりなだった。
・・・・・・・
空調の具合を再度チェックしに来て見れば、色々な丼を試食してはダメだしをする後輩三人。
何事もなければ早くに家に帰れるが、そうもいかないだろう。
「前後不覚の状態だね。」「はい。」
「何度も言ってる様に、肉魅と同じく牛肉にこだわる必要はない。
肉ってお題なら鶏肉だってその分類に入る。」
「田所と水志先輩は何の丼が好きっすか」
小西くんの講義を無視して意見を聞いてくる。
「私は丼じゃないけど、帆立炙ってバター乗せたのが好き」
田所さんは帆立の味を事細かにプレゼンして伝える。
「焦げてなければ何でもいい。」
最近は焦げたものしか食べてなかったからなぁ。唖然とした顔してる。
「だって、究極論。食べれればいいと思う。味の好みは人それぞれだし、疲れてればしょっぱいの食べたいし、気が立ってる時は甘いもの食べたい。時々で違うものでしょ?」
「だから、それじゃあ勝てないんすよー!?食戟何すから、それこそ、A5牛出されたら勝ち目なんてねぇよ。」
「A5牛?肉質等級の?へぇ、そんなコネあるんだ。」
その後小西がいかに肉魅の肉が凄いか伝える。
最高ランクの肉を丼に使うとか馬鹿のする事だと思うけど。
幸平はそれでも牛肉で挑むと言った。
「早い、安い、旨いそれが丼の魅力だろ。肉魅はそれを馬鹿にした。なら、それで勝たなきゃ、意味ないでしょ」
強い口調でいう幸平に対して既に諦めかけている小西。
「とりあえず試作あるのみだ。食材足りなくなったんで買い出しに行ってきます。」
「あ、そだ。修理代。」
二人で小西に詰め寄る。部費と手持ち財産を見せてもらい。
幸平が何処かに走って行く。
「あの修理代は・・・・」
私は深い溜息をついた。