第3章 一章
「おーっす。って、アキ、神菜は?」
十傑評議会会議室に珍しくも寄り道せずに来た第二席の小林竜胆は、目当ての人間が見えず、共通の友人に話しかける。
「あー、なんか用事があるとかで、書類整理早々に切り上げて、どっかいった。学内にはいるよ。」
何処に行くか聞く前に、「書類終わったー、んじゃねー」と間を置かず出て行った。ワタシ、悪くなーい。
「何だよ。せっかく竜胆さんがお弁当分けてやろうと思って、わざわざ来たのにぃー」
「・・・・竜胆、頼むから仕事しに来て欲しんだけど」
今日も今日とて、大量の書類と格闘しているのは第一席の司瑛士。因みに大半はこの第二席の担当するはずの書類という。
「ほら、とっとと片付けるぞ。お前が確認して印押さないと私もバイト行かないんだから。口と手と頭動かせ。」
「ほーい。にしても神菜居ないのに何だかんだ、サボらないよな。」「ふむ、やはり一宿一飯の恩義は大切だからな。」「折敷先輩って律儀っすよね。」
「怪我してるから、大したことなくても、無理せず済む事は手伝ってやらないと。」
と、ちょっとカッコよく言ってみたが、過保護な保護者達に念押しされたのである。
『悪化させたら、シャバ(現世)には帰れないと思え。』と、
「・・・・胃袋(命)握られてるからな。」「楽しんでいて良かったじゃないか。衣食足りて礼節を知る。だな」
「いや、女木っさん。あいつの家の場合。食事情は足りてない。楽しんではいる。」
そう、長らく一人暮らししていたため。人恋しい思いをしていたので大変助かってる。が、
「2日経つのにまともに同居人と会話できない。辛い。」
主に妹さん。会話はおろか、まともに顔を合わせる事も出来ない。
いや、まだ2日なのだが、正直、打ち解けることが出来るか不安だ。
「なぁ、もも〜、何か子供ウケする可愛いキャラ弁やお菓子のレシピない?」
ここは可愛さの伝道師に知恵を
「あるけど、アキにゃんには無理だと思うな。」
このエセロリータ、いつか泣かす。
折敷明紀は誓いを胸に強く刻みつけた。
「そういえば・・・」
ふと思ったが、あの子。私ですらあんなんなら、鍛刀顕現した刀剣にあったらどうなるのだろう。