第3章 一章
「ただいまー。」
家へと漸く帰って来たが、返事が来ない。いつもは頼んでもないのに必ず出迎えてくれるのに、まぁ、台所がアレではな。
理美は、理美で神菜以外の人間が帰ってくる事を知っているので警戒して玄関に行けないのだろう。
学校連れて行くならせめてある程度人見知りしないようにしてもらわねば。
そんな事を考えながら居間へと向かう。が誰もいない。
「どこ行ったんだろう?」「さぁ、台所とか?」
居候が不吉な事を言った。いや、それくらいしかいる場所なんて限られてるけど。
慎重な足取りで台所に進む。
「ちょっと、鶴さんそっち支えてて!貞ちゃんそっちの片付け終わったらこっち手伝って!リッちゃん、危ないからそこうごかないで!」
どうやら炊飯器と電子レンジの修理をしているみたいだ。
見たところ他に壊された物はない事に安堵していると、妹と目が合う。
にこやかに手を振るも、光忠に動かないでと言われ律儀に椅子から降りず、代わりにこちらに手を伸ばしてくる。
「あ、主おかえり!帰って来たなら挨拶してよ」
「玄関から声かけたよ。なんか立て込んでたから台所に入ってからは声かけなかったけど」
「お、思ったより片付いてんじゃん。そして、ただいまー。」
明紀は軽いノリで挨拶して冷蔵庫を確認する。流石に今回は怪我人に任せるのも悪いと思いバイト前に作ってくれる事になった。
「あの後貞ちゃん達に聞いてから、ずっと片付けしてたんだ。主は大丈夫?今日は僕、作ろうか?」
遠征から戻って来たのは昼ご飯食べ終えてしばらくした頃だ。それから今まで掃除していたなんて些か、時間がかかり過ぎて・・・ゲフン。
「掃除大変だったでしょ?少し休んでて。今日はアキちゃんが夕食作ってくれるらしいから。理美、今日はアキ姐がご馳走作ってくれるよ。」
そう言って妹の頭を撫でてやるが妹はジッと怪我をした手を見てる。
「主、手の方大丈夫なのか?」「とりあえず、大事をとって飲食店のバイトはしばらくお預け。まぁ事情を話したら簡単な事務業を頼まれたから、ご飯食べて少しの時間バイトに行く事になった。」
「そっか、あんまり無理すんなよ。いざとなったら俺とみっちゃんがばいと変わってやる」
「気持ちだけ貰っとく。」
やれやれお家でお留守番して貰えるのが一番の助けなのだが。