第3章 一章
「おいおい、勝負はまだ始まってないぞ」
「勝ちが見えてんだよ。それにえりな様も言ってたぜ」
曰く『丼なんていくら拘ってもB級グルメ。低俗な品。この遠月に必要ない』
「価値ある肉に全ての食材はひれ伏す。どんなに足掻いたって私の超高級肉には勝てないんだよ」
そう豪語する水戸さん。
「うーん、納得いかないかなぁ。」「は?」
「あ、ごめんなさい。でもつい、そう思って、小西くんに研究会任せておきたくなくて、とかそう言った意味なら少し理解できてたけど、唯、料理を馬鹿にしているだけなら、ね。」
「先輩」涙目になっている小西。けして感動しているわけではない。
「まぁ、B級グルメってことは認めるよ。でも、世の中にはそうやって食べる時間を削って仕事してる人間がいるわ。そこの業者さんもそう。一度でも丼を口にしたことのないなんてないでしょ?そう言った人たちに振る舞うための料理を学び、研究するのは、いけないこと?」「・・・・・。」
「肉は、捨てる部位がない。でも、捨てないためにはそれにあった調理が必要だね。美味しいものを提供する為にそう言った部位を畜産農家は取り除いて売っている。そうして残った部位を食べてる。そう言った人たち支えられて生きてる人がそれを馬鹿にして良いの?」
そうでなくても、命を頂いているのに。
「んじゃあ、アンタが食戟受けんのか?」
「いや、面倒臭い。ここが取り壊されようが唯、自分が追求すれば良いだけのことだとも思ってる。でも、」
「でも?」
「うん。ここが、もし、食戟受けて負けたりしたら。私、タダ働きしたことになるんだ」
「「「は?」」」
「いや、料金は貰えるとはいえ、用は『近日、取り壊して、施設丸ごと作り変えるものの為に働いた』んだよね?それ、割りに合わないんだよね、申し訳ないけど。」
「あ、あのー、先輩。ちゃんと金は払いますよ?」
「うん。でも、可愛い後輩のため、痛む傷我慢して時間割いて、直したのに、買い換えちゃうんでしょ?私の努力、無駄なんでしょ?」
バンッ!机を拳で叩くと全員が肩を揺らす。
「なんで、もっと早く言ってくれなかったの?」
そんな事言われても、どうしようもないっす。とは誰も言えない。