第3章 一章
一緒のバイトしたり、家で遊んだりする事はあれど、神菜の家に泊まった事はない。高校に入ってからは特に、だ。
人様の家に行くのが嫌なわけではない。むしろ好きだ。
だが、この家は別。
昔は気にもしなかった。しかし、人と言う生き物は成長する。どんなに馬鹿やっても、だ。
この家は怖い。恐ろしい。色んなモノがある。それを自覚するようになった頃から敬遠するようになった。
神菜はその事について気にしない。当たり前のことだと言って、決して、咎めなかった。むしろ正しいとさえ言って笑った。
あまりに清浄で、あまりに不自然で、あまりにも現実と異なる空気。
それを感じる人は非常に少ないのだそうだ。そして、それを知っていて、この場に違和感を感じる事なく過ごしている。
だから、
この家の人は畏ろしい。
襖が開く音がして振り返る。幼い女の子が目を大きく見開き此方を見てる。写真で見るより可愛らしい。綺麗な赤地の梅柄の着物がよく似合ってる。
ニッコリと微笑もうとしたら、
「ぴぎゃぁあああーー!!」
大声で泣かれて逃げられた。頭を数度かき、そして立ち上がる。
・・・・・
・・・・・・
光忠に庭の散歩に連れて行ってもらってからも、結局は機嫌は直らず、お部屋で不貞寝していた理美だが、うつろな頭の片隅に扉が開く音が聞こえた。
最初は聞き間違いだろう。目を伏せるも次はもっと鮮明に襖の開閉を耳が拾った。
そして、人の気配もたしかに存在していた。
この家で人の気配のする存在は今自分以外で一人しかもういない。
その人が何故今は使われてない部屋に入っているのか気にもならず、急いで部屋へと向かった。
知らない女の人がいるとも知らずに。
知らない人がいて、悲鳴と共に急いで逃げ出した。
とりあえず早くそこから離れたかった。
「おーい、待ーってくりー」
しかし、その知らない人は理美を追いかけてくる。しかも笑顔で。
急いで光忠のところに行こう。
「こら、廊下を走るんじゃない!」
そう言って首根っこを掴まれた。そのまま目線が合う。紫の色の髪に晴れたお空のような目の男。
この家にいるもう一つの刀だ。
「おーい、ちょっと待ってくれ」
背後からあの女の人の声がして身を竦ませた。
それを不審に思ったのか、その男は振り返る。