第3章 一章
顕現して一番最初に見たのは、まるで小枝をかき集めて出来た人形のように細い体をした乙女の花の顔だった。
歌仙兼定はその時に悟った。
彼女が、自分が、生涯仕え、守る、唯一の、主人だ。と
そんな、大切な敬愛する主人に与えられた。初任務は
「やれやれ、そろそろ臥せってないで起きたらどうだい?」
主人の血縁、御妹君のお世話だった。
任務を受け、初対面。と、いうわけではない。顕現して主人と自己紹介を終えてすぐに紹介を受けた。
齢3つの娘にしては目鼻立ちのしっかりした可愛らしい印象の子だ。と思っていたが。刀をしていた歌仙にとってこの年の人間。しかも女子は未知の生物だった。どう接したら良いかなんて想像もつかない。しかし、このまま泣かせたままにするのも忍びない。と、手を差し出すも、
「!!?」「イタッ!?」
手をペチンと撥ね付け、俯せって泣き続けた。
「!!雅じゃない!!」
泣いた所で、姉が帰って来る訳でなし。何もせずただ、唯己が不幸を嘆くなんて、愚か者のする事だ。
深い溜息をつく、ふと目線を感じて理美の方を見てみるが顔を臥せていた。
「気の所為か?」
しかし、これからどうしたものか?ふりだしに逆戻りだ。
「歌仙くん?どう?」「お手上げだよ」
ここには初期刀である自分よりも前に燭台切光忠がいた。
聞けば、この本丸の前の主人の刀らしく。今は特例で政府との通信役としてここにいる。
聞くところによると政府の管狐の人員不足の為らしいが、真意は定かではない。
それでも、
「ちい姫ー?りっちゃん??そろそろ機嫌直してー」
優しく声をかけると理美は一度顔を上げすぐにまた顔を伏せる。
歌仙の場合、顔を上げてくれない。
「しょうがないなぁ。もう!・・っしょ!」
そう言って、理美の小さな体を抱き上げる。
「ちょっとその辺散歩してくるから。歌仙くんは先にご飯食べてて。っ!あと、今日は、主と二人で政府に、イッ!話つけたから遠征と出陣はなし。ッダ!代わりに学校に、行く前に主人が鍛刀した刀を案内して。そろそろ顕現してる頃だと思うから。チョ!?髪の毛引っ張らないで!?」
そう言って、降ろせとばかりに抵抗する理美を落とさないように畑の方へと向かった。
「お見事」
そんな二人を見送った後歌仙も頼まれた事を果たすために部屋を後にした。