第3章 一章
一年ぶりに逢う知り合いに挨拶をしていると、
「随分余裕だな。落ちこぼれの分際で」
陰口にしてはわざとらしい大声が聞こえ、目線をそちらに送る。
「おかしいだろ。何で一年間休学してたやつが進級して、その上、十傑とつるんでるんだよ。」
「何か、コネでも使ったんじゃないのか?」
「まぁ、コネ使ったかと言えば・・・コネだね」
不本意だが・・・・。
「ハッ、マジかよ?そんな卑怯者がよくでかい顔してここに来れるな?」
「お前みたいな奴が何で遠月にいるんだよ。」
「まぁ、ここ受けて合格して、運よく生き残れたからね。」
「・・・・・お前料理人になる気ないんだろ」
「うん。今の所」
私の言葉に教室中がざわつく。
(おい、あれって・・・)(戻って来たんだ・・・)
(誰だっけ?あいつ??)(『遠月一の変人』だよ)
「料理人になる気が無いのに何で遠月にいるんだよ。何で落ちこぼれで休学していたお前が残ってるんだよ。」
「・・・・ここに居るからって必ずしも料理人になる必要はないでしょ?学びたいことがあるから学ぶ。それだけのこと。それに対して努力を怠ったことはないよ。誰が退学したかは知らないけど、私がいなかったとしても、その人が生き残れる保証はないし、お門違い。」
「その上、なんだってお前なんかが十傑と一緒にいるんだよ」
その言葉に再びざわつく。
「・・・・・なりゆき?幼馴染が十傑になったから様子見に行ったり一緒にいる機会が増えただけ」
「知ってるよ。俺が言いたいのは実力を伴わない捨石の分際で、大役任されてんだって話だよ」
「それこそ、コネというか、厄介ごと押し付けられたとしか言いようがないわ。」
あっけらかんとそう答える。神菜の対応に神経を逆なでさせられていく同級生。
我慢の限界なのだろうかこちらに手を振り上げようとしてくる。
「その辺にしたら・・・・負け犬の遠吠えみたいだから」 「女子に手をあげるのは感心しねーな」
小柄な女生徒と大柄で体格の良い男子生徒が割って入ってきた。
「あ、女木島さんにももさん。おひさしぶり」
「あたしの大事な幼馴染にあんまちょっかい出すなよ」
「元はといえば竜胆が十傑の秘書なんて押し付けたのがそもそもの原因なんだけど。」
十傑秘書。それが彼の言う分不相応の大役だった。