第3章 一章
身体を強く揺さぶられ、目をボンヤリとあける。
ボヤけた視界に飛び込んだのは、夢の中に出てきた両親ではなく、年齢は20後半位の横に流すように整えられた少し長めの黒髪の精悍な顔立ちの男。
男はこちらが目を開けると漸くホォっとしたように息をつく。
「良かった。随分うなされてたんだよ。」
「ごめん。心配かけて。理美は?」
「まだ、寝てるよ。君はそろそろ起きないと遅刻しそうだったから、今ご飯の支度するね」
「起こしてくれてありがとう。」
片側が眼帯に覆われて見えないが優しい笑みを浮かべて手を振る。
まだ、夢から醒めないボンヤリとした頭を起こすように頭を左右に振る。そして身支度を整えてる。
居間に入ると理美はまだ寝ぼけ眼でこちらを見ていた。
それとは別の視線を感じてそちらを見る。
「何かおかしい?」
目線の先には先程の男とは別にもう一人藤の花の様な色の髪の男が同じ様に眉を寄せている。
「いや、やっぱり少し痩せたかな?って、それに、顔色もあまりよくは見えないから」先程の男がそう答える。「慣れない事したから。まだ、少し疲れてるのかも」
「あまり無理はしなくていいよ。それに、もう少し休んだって」
もう一方が少し気遣わしげに案を言うもそれを拒否する。
「ううん、大丈夫。そろそろ時間だから行ってくるね。理美、光忠や皆と、いい子にお留守番しててね。」
「いってらっしゃい。」
「うん。いってきます。」
光忠は返事を聞いて、姿が見えなくなるまで見送り、扉を閉める。
普段ならば、この後小さな姫君が食べ終えたら食器の後片付けをして、それから家の中の掃除や畑仕事を行うのだが、人手が足りない。日中、学校に行く神菜に代わって行う仕事の他にもやる事が山程あり、正直人手も時間も足りない。
「さて、これからどうすれば良いんだい?」
生憎、相方は作業に不慣れな為教える必要もある。
そして、静かになってしまった家で小さな姫君を一人にさせておくのも気がひける。遊び相手をしてもらうにはこの御仁と小さな姫君では相性が悪い。・・・・気がする。
等と考えていると、軽快な足音と共に件の姫君がやぅてきた。
漸くお眠から抜け出し、姉を探しに来たのだろうが、時、既に遅し。
此方を見上げる目が徐々に曇って行く。相方の耳を塞いでやるのと同時に、泣き出した。