第2章 序章
あの日、お父さんとお母さんは理美をおいて行った。
いつもはいっしよにいてくれるのに、
それから理美はおばあちゃんのおうちでお留守番。
おとうさんがかえってこない。いつものこと
おかあさんがかえってこない。いつものこと
お姉ちゃんがおうちにいない。がっこうに、いってるから。
みんながそう教えてくれた。
おそらが真っ赤になると、お姉ちゃん、帰ってくる。いつものこと。
おばあちゃんが台所にいない。いつも、そこに、いたのに。
おばあちゃんがいなくなった。びょーいんに行った。かえってこない。
お姉ちゃん、おひるなのに、おうちいる。いつも、いないのに。
真っ赤なおそら。ゆうやけぐも、おばあちゃんに会いに行く。いつものこと。
なのに、今日は、いかなかった。
いかない代わりに、ここに、きた。おばあちゃんの大事なもの、取りに来た。でも何も、なかった。
いつもと違う。違うことはこわい。
お姉ちゃん、りみを預けて出かけて行った。こわい、こわい。
はやく、かえってきて。
優しく頭を撫でられた少し節くれだった手は祖母の手。
顔を上げるとそこには知らないおばあちゃん。
お姉ちゃんがあいさつしていたフミオさん。
「お昼ゴハンにしよう。食べていくといい。」
そう言って促されて、理美は食堂に向かう。一人でいるのは怖いから。
皆、得意な食材を使い思い思いの品をテーブルに並べる。
「おや、今日は豪勢だね。」「そりゃあ、ふみ緒さん。当然でしょ?」「俺達遠月学園の生徒だぜ?」「それに今日は週に一度の休日」「その上、小さなお客様がいるとなれば」「腕を振るわない訳にいかないでしょ?」「理美ちゃん、いっぱい食べてね。」
「おい、こりゃ何だい?」
ふみ緒が指差す場所には、不思議なソースがかかったゲソ。
「おぅ、俺の自信作だ。「ゲソのイチゴジャム和え」」
「いらないよ!それはこの子の手の届かない所に置いておきな」
「何でよりにもよってゲテモノを、涼子だって空気読んで米ジュースは出さなかったのに。」「幸平らしいっちゃ、らしいね。」
すぐに寮生は、卓につき、食事を始める。
理美の食卓の前にもそれぞれゲテモノ以外の品が置かれていた。
理美は手を合わせてから箸を持つ。