第4章 ドキドキ!?宿泊研修。えっ!3年生だから参加しませんよ?
「行っちゃった。」「まだ、畑仕事残ってるのに」
髪を両サイドでお団子にした吉野さんと綺麗な黒髪の榊さんが困った様に言う。
「まぁ、すぐ、二人して帰ってくると思いますよ。気長にのんびり作業しましょう。」
二人と言った神菜に対して不思議そうな顔をして見つめてくる後輩達にいつもの笑みを返す。
「あ、そういえば一色さん。一昨年渡したトマトの苗の方はどうですか?」
「ビニールハウスにあります。相変わらず、よく育ってますよ。『みらい』より甘いですし、小さな子にもよく食べてもらえてました。」
「ああ、まだ続けてるんだ。関心関心。アレは干拓地でも日光によく当てておくとよく育つからね。今回の西瓜もかなり良い苗選んだし、空中栽培にしたなら間引きと整枝とか手入れが楽だよ。」
南瓜とか地べたで栽培すると蔓の間引きがかなり面倒な事になるから。
たわいも無い話を続けてると、我が家の昼時に近づいていた、戻って来て貰わないと流石に困るのだが、
「そういえば、そろそろ一年生は例の研修が始まりますよね。」
「あ、そういえば私もこのくらいの時期だったわ」
すっかり忘れていた。今年の新一年寮生のほぼ全員青白い顔をしだした。
ほぼと言ったのは表情が前髪で見にくい人と、よく分かってない人がいたからだ。
「何すか?それ?」分かってない人、幸平さんに聞かれた。
「あーうん。大した事じゃ無いよ。大体この時期にちょっとした生徒達の交流会みたいな感じでお泊まり研修があるってだけ」
一年生の何人かが此方を物凄い目で見てきた。
「研修だから、料理漬けになるけど、今更ごねたって行くのは決定事項だし、まぁ気楽に行くといいですよ」
「それもそっすねー」
うっ!視線が痛い。『何言ってんの??この先輩』って言う心の声がヒシヒシと伝わってくる。
「って、気楽に行けるかーい!!」
と、ツッコミを入れる吉野さん。鶴丸国永が見たらとても目を輝かせそうな鮮やかさだ。
「ちょ、ちょっと、悠姫・・・先輩にそんな失礼な」
榊さんが宥める様に優しい声で吉野さんを叱るが、
「あの地獄の合宿を気楽になんて思うわけないだろうが!?見て!恵の顔!恐怖で真っ白になってるでしょーが!」
「あら凄い、鶴みたいね。」
「先輩、鶴は頭が赤いんですよ?」
のほほんと返す一色さん。
