• テキストサイズ

幸福のレシピを貴方に。(食戟のソーマ)

第2章 序章


変わり者の先輩が寮から出て行った後、寮生は体からドッと力が抜けるのを感じた。
自分達もこの学園では変わり者の代表みたいなものだが、上には上がいた。

「ははは、先輩にも困ったものだよ。一色畑も漸く元の持ち主の手に渡ると思ってたのに。畑の収穫物の高額買い取り先とわざわざ僕の欲しがってた新種の種と肥料まで」
復学を薦める一色を黙らせるには充分な賄賂だった。


「そんな事より、」「うん、」「・・・・」「あははは」

目線の先には、先程から話題に上がっている御仁の、妹。
彼女は一人取り残されていた。

御仁は、というと、寮の電話で学校に呼び出しを受けて、今そちらに向かっていた。
妹も一緒に連れて行くわけには行かず、待っている様に言い聞かせた。その時の妹は、この世の終わりとばかりに青ざめ、そのまま寮の玄関が閉じられると、その場にうつ伏せになって縮こまった。

そして今も帰りを待つ為玄関の前に座り込んでいた。

寮生の皆は、というと。小さな女の子一人残して作業に没頭する訳にもいかず、どうしたものかと首を傾けていた。

しかし、この女の子。近づこうにも誰が行っても警戒心丸出しで、しかも涙目で後ずさりするのだ。流石の強面男子もこれには傷心。

「悠姫と恵で何とか宥めて泣き止んでくれたのに」
妹は、姉が引き返してくれないと理解したと同時に、泣き出しそうになった。
すかさず恵が駆け寄り宥めて、少し落ち着いた辺りで悠姫が管理してるジビエを連れて来てくれ事なきを得たのだ。

泣きはしていないが時間の問題かもしれない。

「うーん、やっぱり、汗臭い格好で近づいたのがダメだったんじゃないのかな?」一色先輩が思案顔でいう。確かにそれはマナー違反だ普通なら
「・・・・一色先輩の場合、それ以前の問題だと思います。」
「そもそも、一色先輩見た瞬間から大幅に距離が遠のいたんすけど」
「おや、普段着に着替えて来たんだけどな」
一色先輩は普段着だった。

普通の人の普段着ならば何ら問題はないが、彼の普段着は、
「おや?子供の前だし、気を配ったんだよ。ほら、エプロンの柄熊さんだし」
「・・・・全裸にエプロン着て迫る人間怖くない人いたら見てみたいっす」

結果、妹御は強面の男子が声をかけてきた時以上に怯えた。



/ 180ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp