第4章 ドキドキ!?宿泊研修。えっ!3年生だから参加しませんよ?
本丸にあるとある蔵の中、
「ったく、何で俺がこんな事・・!」
鈍色の三白眼の瞳と黒鉄の様な黒髪の筋肉隆々とした鍛え抜かれた肉体を持つ男が少し面倒臭そうに蔵の中の物を整理していた。
「まぁまぁ、同田貫よ。コレも修行ぞ。」
もう一人は納戸色の坊主頭に僅かに赤みがかった黒い目に目元に紅で隈取りを施した体格の良い男が宥めるように相方に声をかける。
「けどよ。山伏の旦那、アンタだって不満じゃねーのか。最近、上の特別措置だか、何かで大太刀や他の太刀連中はよく駆り出されるってのに」
「カッカッカ!なぁに、主にも考えあっての事。それにコレも修行と思えば」
駄目だ。この朴念仁に何を言っても同意を貰えまい。同田貫は溜息をついた。彼は数ある刀剣男士の中でもそれなりに特殊な成り立ちなのを山伏国広自身も記憶している。
戦が始まった初期は『太刀』として、そして現在は諸々の事象があり『打刀』として顕現されるようになった刀なのだ。
勿論、その事に不満はない、使い手に合わせ、磨上を行ったというだけの事、刀とはそういう物。
しかし、せっかくそうして主人に合わせたのに、存分に使って貰えないのは不満なのだろう。同田貫正国は元々実戦用の刀として作られた『同田貫』の集合体の様な存在だ。
戦場こそが自身の居場所。それ以外の内番にはあまり好んで行わない。
山伏国広自身はコレも修行の一つと思う事にしているがやはり出陣が無いというのは少し堪える。これならば山籠りでもして己の精神を鍛える方が有意義な気も・・・
「っ、ごめん!二人とも。蔵の掃除任せっきりにして!見つかった?」
主の良く通る声が聞こえ、振り返ると作務衣を着て慌てて蔵の中に入ってくる様を視界に捉えた。
そんな事を考える時に限って当代の主は此方の様子を見に来る。
「ふむ、所望の何冊かは見つけた」
簡単に表紙を確認して大きく頷く。
「主よぉ、いつになったら俺達を戦に連れてってくれんだ?」
「えっ!?あーうん。今回の任務が少し特殊だからね。今先遣隊の報告を待ってから、近侍とも相談する。」
「よーしっ!んじゃ、ちょっくら鍛えに行くか!」
バシっ!と拳を叩いて蔵を出る。まだ出陣させると決まっているわけではないのに。
主は唖然としながらすぐに困った様な笑みを浮かべた。
