第4章 ドキドキ!?宿泊研修。えっ!3年生だから参加しませんよ?
肩に温もりを感じた。白檀と伽羅の様な香りが体を包み込むように聞こえ、
「・・・・」
目を開けると机に突っ伏して寝ていた。肩口から先程から此方を包み込む匂いを感じて目を向けると羽織がかけられていた。
縹色の羽織。誰がかけてくれたのだろう。
「捗っているか?」
部屋の外から声が聞こえてきた後襖が開く。深く落ち着いた鶯色の癖のある独特の髪型の前髪に少し目元が釣り上がった黄色味が強い緑色の瞳をした男が湯呑みと急須を持ってきた。
家に帰ってすぐ祖母の資料を読んでいたが、どうやら、そのまま寝てしまったらしい。
「あんまり、あ、お茶入れてきてくれたの?」
頂こうと手を伸ばす。
「いや、俺の分だ」「あ、そ、そ、そう・・・そうだよね」
流石レア太刀と呼ばれる古備前の鶯丸。ニッコリとそして容赦なくバッサリ切り捨てられるとは。伸ばした手は虚しく空を掻く。
鶯丸は手に持ったお茶を美味しそうに飲んでから、はんなりと微笑んでから。
「すぐに平野が茶を入れてきてくれる。俺は月見がてら様子を見にきただけだ」
と、答える。
「主さま、失礼いたします。お茶をご用意しました。少し休憩されては如何でしょう?」
小柄な品の良い、少年が静々とお茶を持って入室して来た。
「ありがとう・・・平野。」
お茶を受け取り一服。ほんのりと桜の香りのする緑茶が体を適度に暖めてくれる。スッ、と平野が皿に乗せた握り飯を此方に差し出す。
「ご帰宅から何もお召しになられていませんでしたので、よろしければ。」
時間を見ると結構な時間が経っていた。有り難く頂戴する。
「ありがとう。平野はよく目端が効くね。羽織も平野が?それとも鶯丸が?」
「いや、俺ではないぞ?」
聞いておいて何だが、頭に手をやった。
冷静に考えれば、仕事の進捗を聞いていたのだから彼ではないのは聞かずともわかる事であった。どうやら頭はまだ半覚醒状態らしい。
「僕でもありません。ですが、よくお似合いですね。」
「ああ、香りも・・・少々大人びて見えるな」
「祖母のものですから・・・ね」
懐かしげに透き通るように白く可憐な花の柄に触れて、神菜は少し淡く微笑んで見せた。