第4章 ドキドキ!?宿泊研修。えっ!3年生だから参加しませんよ?
「本当に大丈夫ですか?荷物途中まで運びますよ?」
今日中に半分は持って帰ると言う事だがその半分もまた、凄い量だった。大きなダンボール箱三つになるとは・・・。
「大丈夫ですよ。荷台借りたし。今日はありがとうございました。それじゃあ、また明日。」
ニコリと笑みを返し、ガラガラと荷台を押しながら帰っていく先輩の姿。
「にしても、先輩の妹さん。本当に泊まりに来るんすかね。」
前回、お世辞にもおもてなし出来たとは言い難い結果になったので、ある種来てくれるのは嬉しい。本当に散々だったのだ。曲がりなりにも味自慢の遠月の生徒。それが腕を奮ったというのに、齢4つに満たない幼子は表情は疎か、顔色一つ、眉一つ、変えなかった。
料理人にとってこれほど屈辱的な事は無い。
見慣れない他人がいる場で緊張して、かもしれない。
人間、美味な物、不出来な物とはいえ、食べ慣れないものでも表情は自然と動く筈だ。がそれが一切無かった。まるで人形のように。
リベンジの機会があると言うのなら思う存分主力を尽くす。
寮生達は口には出さないが誓っていたのだ。身勝手な事この上ないが。
「アンタ達、この段ボール玄関ホールに置いといとくれ。邪魔でしょうがないよ」
残りの段ボールは先輩の部屋の前に置いておいたのだが、仮に明日持って帰るとして階段を往復するのも大変だろう。と寮生達も思い、ふみ緒の指示に従う。
「っかし、すげーな。どれも・・・写本か」
段ボールの中には和綴の冊子が何冊も入っており、表紙にタイトルはなく柄で区分されてるらしく、内容はどれも墨で書かれてる。
「神菜の祖母、此処の前寮母の資料だからね。卒業生の作ったレシピとかも本にしてある筈だよ。」
丸井は先程から借りた本を熱心に読んでいる。チラリと本を覗いてみる。
「ップ」「なんだこの絵。」「ナハハ」「ギャハハ」
ミミズがのたくったような謎の絵が描かれており見たものの腹筋を刺激した。
「あれ?何か落ちたよ?」「ん?何コレ写真?」「水志先輩かな?綺麗」
モノクロ写真の中には頭をすっぽりと着物で覆った単に大腰袴といった古風な衣装を身に纏った女性の姿があった。
こちらに向かって、柔和に、淡く微笑む姿を見て思わず言葉を溢す。
しかし、先程見た笑みとは少し違って見えた。
