第4章 ドキドキ!?宿泊研修。えっ!3年生だから参加しませんよ?
「先輩、コレとか持っていきます?」
「田所さん、貸してください。ええっと、コレは・・・うーん。いらないか、あっ、幸平さん、できれば笹百合の柄紙の冊子は此方に」「うっす!」
「先輩。この桜色のモノは?」
一色先輩が渡した本をペラペラと流し読みしてから、水志先輩は
「あー、うん。・・・コレも持っておくか」
と、本を脇に置く。
開かずの部屋は既に鍵は返されてる為寮生ならば誰でも入れるのだが、女性の部屋とあって男性陣はつい気が引けて、入る事がなかった。が、
「一人であの部屋の本探すつもりかい?全員貸してやるから、みんなでやりな。」
と、寮母に言われた。
入ってみると、他の部屋と同様に木製の机と椅子が置かれてあるが、ベッドがない。代わりに沢山の本棚に所狭しと敷き詰められた冊子本、和綴の本の山。しかも本棚はカラクリ時掛けで本棚の奥にもう何個も本棚がある。
「す、す、凄い。コレ。ベスト・ガストラミー料理評論とレシピが書かれてる。げっ!?コッチよく見たら廃版された料理本の写し!あー!!こっちには日本料理の歴史書として名高い大堀羅州茶禄!!??す、凄い、国立図書館に行ってもない古典料理書まで!!??」
動悸がするのか、やや興奮気味に、というか触るのすら恐れ多いとばかりに丸井がたじろいでいる。
「もう、丸井〜少し手伝ってよ!って!涼子まで何本読んでんの!?」
「ご、ごめん。悠姫。この本に造酒の別起源の事が書かれてて、つい」
本を探す手伝いをするものの内容が気になり読み出すものもいれば、
「おい!?テメー、どこ見てやがる」
「んだと!?そっちこそ邪魔なんだよ」
と、取っ組み合いの喧嘩始めてバサバサと本を落としている人間もいる。
手伝ってるのは、田所、一色、幸平と
「先輩、さっき頼まれた菊柄の本ダンボールに詰めときました。そっちも持っていきますか?」
「ありがとうございます。伊武崎さん」
伊武崎が数冊にも渡る本が入った段ボールを外に運んでくれていた。
「よし、こんなもんか。思っていた以上に量があるな。明日半分もって帰ってるか」
扉を閉めようと声をかけると渋い顔をする者が二名。
「あー、興味あるなら借りてて良いですよ?その辺に興味があるならウチにある何冊か明日持ってきますね。」
と言われ、渋々部屋を出る2人だった。
