第4章 ドキドキ!?宿泊研修。えっ!3年生だから参加しませんよ?
点検に早々に見切りをつけて、久しぶりに極星寮の様子を見に行ってみた。
畑の方も野菜が順調に育っている様で一安心だ。
夕方ともあって、外に出てる生徒はいない。今頃夕食の準備をしてる頃だろう。
「あっ!そうだ。ついでにおばあちゃんの資料少し貰っておこう。」
今回の三年生の研修で役に立つモノもあるかもしれないし。
思い立ったが吉日。
極星寮の玄関を叩き、返事を待たず建物内に入る。
黙々と立ち込める燻された空気が出迎えてくれる。
「ゴホゴホ!?何っ!これ火事!?」
嫌、僅かに煙に混じって桜の様な芳潤な香りがする。
『208号室!!また空き部屋で薫製作ってるね!?いい加減にしないと、アンタをスモークチップで燻してやろうか!?』
そこへ間髪入れず寮母の一喝が響く。この香りやはり薫製肉か。
しかし、この煙たさ、空き部屋の空調が動いてない様だ。
近々、直しておかねば、遠くない未来、ボヤが起きる。
「うわぁ!?ふみ緒さん!大変、檻が壊された!!鹿乃進、鴨五郎、兎美!雉尾!?逃げないでぇー!誰か捕まえてー!?」
『悠姫!!また屋内で禽獣飼ってたね!?今日という今日は許さないよ!大事な禽獣共全員今日の食材にされたくなかったらとっとと捕まえな!』
どうやら取り込み中らしい。日を改めようか。そんな事を考えていると、砂埃と共に、可愛いらしい禽獣達がこちらに突進してくる。
少しため息をついてから、髪留めについた鈍色と納戸色の飾りを数回叩く。
・・・・・・
「おーい、吉野、鴨助捕まえたぞ」「兎美と兎子ならいるわ」
「これで全部か?」
「えーっと、後は・・鹿乃進と雉尾と兎助と鴨美がいない。どうしよう!あいつら外出ちゃったかな!?」
「とりあえず玄関ホールに急ぐぞ」
玄関ホールに向かうと扉が開け放たれていた。
顔を真っ青にして蒼褪める吉野。
「あ、やっと来た。ほら、お迎えが来たよ。お行きなさい?」
和やかな声と共にひょっこりと逃げ出した動物達が吉野の側に
「鹿乃進!兎助!雉尾!鴨美ー!良かった!!」
「やれやれ、ちゃんと礼をいいな。悪かったね。神菜。」
ふみ緒が呆れ混じりに礼を言われ、先程と同様に穏やかな笑みを浮かべて、変わり者の先輩は笑っていた。