第3章 一章
「主!!!良かったぁー。あんまり心配させないでよ」
家に帰って来てすぐ、玄関先で待ってましたと言わんばかりの抱擁を受けた。
「・・・・燭台切、すまないがこの体勢で抱きつかないでくれるかい?僕まで身動きが取れないんだが」
「と、いうか、私は、もう、い、意識が」
神菜は仰向けブリッジ体勢のまま、歌仙はそんな神菜を首と腕だけで支え、基ガッチリホールドさせた状態で、抱きつかれた。
それはもう、親鳥が抱卵の為懐に抱え込まれるように。
まだ時折寒さが残る季節とはいえ、かなりグラマラスで男らしい筋肉のついた大人の胸、腕力もかなり強い。感極まっているのかギリギリと骨が軋んでいる。流石刀剣男士と、意識を違う方向に向けようとするも、熱い。ぬくい通り越して、熱い。めっちゃ熱い
「あっ、ご、ごめん!歌仙君」
「おっ!アルジ、帰ってたのか」
「主!!!ご無事で何よりです!!」
ゾロゾロと集まってくる刀剣男士、遠征に出した刀剣達も帰還していたのか大群で押し寄せてくる。ヤバい圧死するかも、
ゴン!
「あぅ!?」
と、思ってると。光忠が両腕に抱えて大群にタックルされるのを防いでくれる。が、勢い余って天井に吊るされた灯に頭をぶつける。
「ご、ごめん!大丈夫?!」
「やれやれ、君達、そんな押し寄せて来て、せっかく病院に行ってくれたのにまた連れてく事になってしまうよ」
少し呆れたような口調で歌仙がみんなを宥める。
「あっ!病院に行ってくれたんだ。」
目線を神菜合わせて光忠が問う。
「歌仙に連れてかれた」
思い出したくもない。
この体勢のまま、受付、待機、診察を受けた。
こちらの事情などについて理解のあるかかりつけの医師や看護師達の生暖かな目線と肩を震わせている様を逆さま状態ながらずっと見続けた。
何の苦行だ?
そしてそのまま帰還。
ほんと何の苦行だ、コレ。と、捲し立てたいが、何も言わない。
早く忘れよう。
「そっか、良かった」
何より、優しく此方に微笑みかける近侍の姿を見て何かを言う気が既に失せたのだ。
神菜もまた、近侍に甘いのであった。