第2章 序章
「で、誰なの?ふみ緒さん。一色先輩その人??」吉野悠姫が問いかける。
「あー、君達は知らなかったっけ?彼女は、水志神菜さん。
ここの寮生で僕らの先輩だよ。田所ちゃんや幸平君とはさっき少し話したよね。」
「あ、開かずの間の寮生さん」
「あー、ずっと休学してて今年二年かもしれない」
「ゆ、幸平くん」
青ざめて創真を嗜める榊が気まずそうに紹介されたばかりの人間を見るが変わらず、若干困った様に微笑む。
「紹介されたとおり、一色慧君の元、先輩です。
よろしくね。こっちは妹の理美です。ほら、理美。挨拶しなさい。」
足にしがみついた理美と呼ばれた女の子はより一層しがみつき隠れてしまう。
そのあと大皿をテーブルに置き一同、食事を開始した。
素朴なものが多いものの味は美味しく日本人の朝食として抜群に美味しかった。
「元寮生なんすよね?俺達、寮入って長いけど一度も見かけたことない気が・・・なぁ」「あ。あぁ」
青木と佐藤のコンビが言う。
「高等部に入る少し前から祖母のお見舞いとかで寮にいる時間があんまりなかったからね。でも、みんなの事は一色君から話は聞いていたよ。田所さんとは寮に入る前に何度か会ったよね?」
緑茶を皆に入れながら説明する。
「あ、はい。・・・・納屋で」
「(納屋?)学校にいるって事は先輩。復学するんすよね?」
一服含むと程よい温度でまた食後の腹にゆっくり馴染むのを感じ創真は問いかける。
「そうですよ。先輩、畑の方見てくれましたか?あれから肥料とかも変えて、今質のいい野菜が」
普段の一色よりも少し気分が高まっているのか興奮気味に話しかけている。
「それ、なんだけど、ね。元々あんまり成績も良くはなかったし。このまま留年してあと二年、下手したら三年、四年。学生するのもちょっと・・・ね。」
そう言ってお茶を一服する。
「退学希望届。出してきた帰りなんだ。な、これが」
その顔はひどく穏やかで、少し寂しげに見えた。