第5章 恋花火(不二夢)
「あらら、行っちゃったね」
「うーん…裕太はどうして逃げちゃったんだろう」
逃げていったのはアナタの黒オーラにビビったからだと思うよ…なんて心の中でツッコんだ。
裕太君の後ろ姿を悲しげに見つめる周助の横顔が
儚げで美しかった。
「シャッターチャンス!」
私も先程の周助の真似をしたくなってスマホで撮影した。
「フフッ……本当に君と居ると楽しいよ」
「あ!出店たくさん出てるから行ってみようよ!」
その後、周助の大好きな大きいリンゴ飴と、わたあめ、チョコバナナ、
ヨーヨーすくいに、射的と沢山食べて遊び尽くした。
「…今日のお祭りはね、夜8時に花火が打ちあがるみたいなんだ
一緒に見ようよ。」
「見たい!周助と花火見るの初めてだね。楽しみ!」
花火の見物客も増えてきたのか、人が増えてきてはぐれそうになると
さっきよりもぎゅっと強く手を繋がれた。
細身で背もそんなに高くない方だけど、
こういうところは本当に男らしいなってドキドキする。
「橋のあたりはまだ人が多くないから、あそこで見ようか」
「うん…」
顔を赤くしている莉那に気付く。
「顔が赤いけど、どうかした?」
「…人混みの中で、手を握ってくれて…人にぶつからない様にリードしてくれたでしょう?
私の彼氏はやっぱりカッコいいって」
「…フフッ。当然だよ。莉那を護るのが僕の役目だから
ね、ちょっとこっち向いて?」
「ん?どうしっ…!」
ヒューーーッ
ドォーンッ
「さっき、見られるからキスはもうしないって言ったのに……」
「クスッ…今は皆花火に集中してるから大丈夫だよ」
えー!…そういうもの?
「皆が見てないうちに、ね」
「ちょっ…!っん…」
また流されるままにキスをしていると莉那のスマホが鳴る。
そのバイブ音でどちらからともなく離れる唇。
「…お母さんから?」
「うん…もう少しで帰るよー…だって」
「そっか。帰りは道路も混むと思うし、早めに帰りたいんじゃないかな?」
「でも、次いつ会えるかわかんないのに…」
「会えなくてもさ、いつも君のことを想ってる。毎日学校で会えていた頃よりも離れてる間が長い程
こうして会えたとき嬉しさも倍増するんじゃないかな?」