第5章 恋花火(不二夢)
車に鍵を掛けると、手を繋ぎながら神社へと足を進める。
「言い忘れてた。浴衣姿、とってもキレイだよ。」
「ありがと。周助も浴衣凄く似合ってるよ!かっこよさ100倍!」
「フフッ…ありがとう。後で一緒に写真撮ろうね。」
履き馴れていない下駄に転けそうになる所を
周助が支えてくれる。
「大丈夫?…少しゆっくり行こうか。」
「ありがとう。でも、会わせたい人が待ってるんじゃないの?」
「あぁ、その相手ならあそこにいるよ」
周助の視線の先には、わたあめにかぶりついている男の子の姿が見えた。
「ん?…あれって、裕太くんだよね?」
写真で見せてもらった事はあるけど、会うのは今日が初めてだから、ちょっと緊張するなぁ
周助は裕太君に会わせたかったのね…
女の子かと思い悩んでいたのが恥ずかしい……
「チャンスは…逃さない!」
カシャッ
いつの間にかカメラに手を伸ばした周助は
美味しそうにわたあめを頬張る裕太くんを沢山写真に納める。
その音に気付いたのか
「な、兄貴!いきなり写真撮るなよな!全く」
私に気付いた裕太くんは気まずそうに
「あ…えっと。どうも。」
と挨拶をしてくれた
「初めまして、中谷莉那って言います。お兄さんとお付き合いしてます。裕太くんの事はお兄さんから沢山聞いてるよ!」
ぺこっと頭を下げると
「初めまして、不二裕太です。兄貴が迷惑掛けてないですか?」
「ん…?裕太、何か言った?」
「あ…いや、別に」
黒オーラを纏った兄の姿を見た裕太は
「ハハッ…あ、俺観月さんにお土産買ってくって約束してたんだった!中谷さんお祭り楽しんで下さいね!」
苦笑いしながら去っていった