第5章 恋花火(不二夢)
…まあ、着いてくるだけなら良いか。
「もー、仕方ないなぁ。」
ちょっと寂しがり屋の父親をもつのは面倒だな…って思ったけど、言ったらややこしくなるから口を閉じた。
昨日緊張して中々眠れなかった私は、我慢できなくなって眠りについた
40分程で目的地の駅近くの駐車場に車を停める。
「着いたー。ちょっとパパ、莉那の事起こして!」
「おーい、起きてー。駅に着いたぞー!ダメだ、起きないよ。」
肩を揺すっても、声を掛けても全く起きる気配が無い娘に父は困り果てていると、
「あ…!」
余り人通りの無い駅だった為に母は、不二に気付いた。
「パパ、ちょっと車から降りて!良いこと思い付いたから」
なんの事か分からなかったが、不二の姿を見つけて「あ、そう言う事か。分かったよ」
不二に事情を説明する為に、車から降りた両親は
不二の元へと歩き出す。
すると不二も気付いたのか駆け寄ってきてくれた。
「こんにちわ!莉那のお父さん、お母さん。ご無沙汰してます。今日は遠い所、ありがとうございます。」
丁寧な挨拶をする不二に、感心する両親。
「相変わらず、礼儀正しいねー。テニス合宿頑張ってるみたいだね!娘から不二くんの活躍振りを聞いてるよー?」
「それで、不二くんにお願いなんだけどあの子まだ車の中で眠ってて、起こすのを頼んでもいいかしら?」
「クスッ…わかりました。でも、車の鍵はどうしたら良いですか?」
「起きたらあの子に渡してくれれば良いわよー。お父さんがスペアキー持ってるから心配しないでね?
私達もこの辺りを散策してくるから。じゃあ、よろしくね」
「はい、お気を付けて」
莉那の両親を見送り、
車に着くと、まだスヤスヤと眠っている彼女がいた。