第5章 恋花火(不二夢)
「そうだ、裕太にも声かけないと…」
そう思って先程まで裕太が居た席を見たけど、もう居なくなっていた。
「今居ないなら、練習終わったら声掛けてみたら?」
エビフライを口に入れたまま、喋る英二
「そうするよ。それからいつも言ってるけど、英二、口に入れたまま喋ったらダメだよ?」
「ふぁーい」
朝食を食べ終わり、食器を下げると館内放送が入る
【間もなく本日の練習を開始します。選手はコートに集まるように】
午前の練習、昼食、そして午後の練習も終わり、裕太に声をかけた
「裕太、僕とお祭り行かない?ちょっと紹介したい人が来るんだ」
「別に良いけど…紹介したい人って誰だよ?」
「クスッ、会ったときに教えるから。裕太には神社で待ってて欲しいんだ。」
どうせ、彼女とかだろ?と思ったけど、
「分かったよ」と頷くしか出来なかった。
その頃の中谷宅
浴衣を着せてもらった莉那は少しだけ化粧もする。
「お母さん、変じゃない?」
「可愛いわよ!じゃあ、お父さん留守番よろしくねー」
「ん…?浴衣着てどこ行くんだ?」
「もー、デートだって言ったじゃん!」
呆れながらお父さんに言うと
「今日だったか、不二君に迷惑かけるんじゃないぞ?」
もー…皆して私を子供扱いして…
来年は高校生になるし、私だって子供のままじゃないっての…
「行ってきます」
お父さんを家に残し、お母さんと車に乗り込むと
何故かお父さんも乗り込んできた。
「ちょ、何でお父さんまで乗り込んでくるの?」
「俺も行こうかなって、思って…」