第1章 雨の日のkiss(菊丸夢/甘)
「はぁー。会いたいなぁ、英二先輩」
心の声がポロっと洩れてしまう。
でも会ったところで会話が成立しない位
緊張してしまうのは分かりきった事だけど
こうも会えないと胸が苦しくなるのは本当に不思議。
その時
「だーれだ!」
後ろから掌で目隠しをされたが
聞き慣れた声と仄かに香る香水ですぐに分かった
「え……、英二先輩ですか?」
一気に顔が紅潮していくのがわかる。
「ピンポーン!大正解!」
「い、いつからここに?」
まさかさっきの(会いたいなぁ)って聞かれたりしてないよね?
「んとね、会いたいなぁ英二先輩から……かな?」
聞かれてたなんて恥ずかしすぎる!
「さっきの言葉の意味ってさ……その、」
「さっきの言葉は……あの、えっと、わ、忘れてください!」
「えぇ!?莉那ちゃん!待って!」
隠してた気持ちが先輩に伝わってしまう!
秘密にしておきたい!
先輩を振り切ろうと逃げるように走ったが
「きゃっ!」
簡単に追い付かれてしまう。
「捕まえたよん!」
ぐいっと力強く引き寄せ、そのまま莉那は菊丸に抱きしめられてしまった。