第4章 candy☆love(千石夢/甘)
「右手にする!」
俺の右手を指差す。
「ふっふーん。本当にコッチで良いんですね?」
「いいよ!」
パッと右手を開くと…キャンディーは入っていなかった
「ありゃりゃ……はぁー、ついてないなぁー」
「クスッ。付き合うのはムリだけど、お友達……に」
本当は両手にキャンディーを入れておくつもりだった。
でも、真剣に考えてくれている姿を見たとき、ズルをするのは止めようと思ったんだ。
はぁーと大きく息を吐いて肩を落とす俺の後ろを見て、一気に悲しそうな表情になる。
「ん?どうしたんですか?」
「……何でもない」
莉那さんの視線の先には
写真に写っていた元彼さんが、他の女の子と仲良く歩いているところだった。
向こうは気付いていないようで、手を繋ぎ改札方面に歩いていった。
「大丈夫ですか?」
「うん。平気…」
もう別れて三年経つのに可笑しいよね?…と泣きそうな顔をする莉那さんを、見ていられなくなって抱き寄せた。
「ちょっと…離して、よ」
「こうすれば泣き顔見られないで済むから…我慢しないでください」
ギュッと俺の制服を掴んで
小さくありがとう…と呟いた。
五分程抱き合った所で落ち着いてきたのか、
ゆっくりと離れていく。
「俺を利用してくれても構わないですよ」
「どういう事?」
「忘れられるまででも良いから、傍に居させて下さい。」
そんな事…ダメだよ。利用するなんて酷いこと出来ない…