第3章 ペテン師の憂鬱(仁王夢/悲恋)
柳生に渡されたハンカチのお陰で頬の赤みは引いてきた
「もう大丈夫じゃ‥さて、戻るか」
「ええ。戻ったら必ず中谷さんに謝ってくださいね」
「あぁ。分かっとる」
コートの片付けは大半が終わっていたので、部室に行くと
話し声が聞こえてきた
「うっ…ひっく」
「何で泣いて戻って来たのか言ってくれないか?」
莉那と幸村の声がする
「仁王に…っく…告白されて、キ、スされた」
「そうか…辛かったね…仁王には俺から言い聞かせるよ。」
優しく莉那の頭を撫でる幸村の手に
落ち着いたのか
「もう大丈夫!ありがとう」
いつもの元気な莉那の声に戻っていた
「ねぇ、告白の返事は何て伝えたのか教えてくれないかな?」
「あ、それは…他に好きな人が居るから仁王の気持ちには応えられないって伝えた。」
「好きな人って俺のことかな?」
「うん…知ってたの?」
「君のことずっと近くで見てきたからね。すぐ分かったよ
……俺は莉那が好きだ。付き合って欲しい」
「すぐ口悪くなる女の子でも良いの?」
「フフッ、そういう所もひっくるめて好きだよ」
こっちおいで?
と莉那を腕の中に包み込むと
「んっ…」
「これで仁王の感触は消えたかな?」
優しいキスを一つ落とす。
失恋ってこんなに苦しいものだったんじゃな
幸せそうにキスをしている二人を見てると胸が締め付けられる。