第18章 闇の中
ドクドク真っ赤に流れ続ける生暖かい血肉の塊を目を見開き見つめていた。
死んだベトレイを穴が空くほど見ている。
震える身体を必死に抑えようと奥歯を噛み締め刀を持つ手をきつく握りしめていた。
「何、今の顔……辞めてよ…最期の言葉が私の名前?今まで一度も呼んだこと無いくせに…何で最後に名前を言うのよ、気持ち悪い!!」
裏切り者を責めるように早口で喋った。
本名を頑として呼ばなかった女が、死ぬ間際に発した言葉は私の本当の名前だった。
「ネツキって名前の方が呼びやすいから
ずっとネツキって呼ぶね」
そう笑顔で初めて
挨拶をした時に言われた。
「なんでそんな優しそうに笑った顔したのよ。嫌…見ないでよ!!」
大声で叫び軽くパニックになりながら後退した。
「!!!」
「ッ!!」
ブワッと汗を流してコネを見つめれば、
肩を掴まれていた。
「…落ちつけ。大丈夫か?」
コネのお面越しから見えた真っ直ぐな瞳を見つめた。途端に私は冷静に戻った。
ゆっくり…
深い溜息をついた。
「ありがとう、ごめん…大丈夫。」