第13章 イルカ先生
真っ黒な日傘の手元を強く握り過ぎて手の平に爪が食い込み、気がつけば爪の垢がクッキリと残り赤くなっている。
額から流れる汗を手で拭いながら、ずっと、カカシ先輩の背中を見ていた。
こんな醜い姿をカカシ先輩に
見られた事に自分自身に幻滅し落胆、後悔している。
何故我慢出来ないのか…
自分は誇り高き暗部じゃないのか?
感情を殺す事が何よりも得意なのに…………殺された仲間の映像が何度も浮かび上がる。
あんなに明るいキャンパスの絵の具のように、キラキラ輝いていた景色が、どす黒く暗闇に塗り潰されていく。
「、誰もお前を責めたりしてない、思い詰めるな。」
「…っ!!あ…いえ、はい!大丈夫です。すみません、まだまだ時間がかかりそうですね、私の闇は…」
情け無い言葉を口から出しては、また後悔した。
(闇?……闇って何?)
仮面の中で小さく
白けて笑った。
「今からイルカ先生のとこに持って行くけど、良い?」
カカシ先輩の声が頭から聞こえた。目の前に立ち、私を見下ろしていた。
上を見上げれば、いつの間にかアカデミー玄関前まで来ていた。
「…っ!あ……もちろんです!行きましょう!」
仮面の中で、目が合えば、
目を逸らした。
(今は仕事中だ。何を考えている…。)
大きく深呼吸をして
目を閉じた。
(私は…暗部のプロだ。誇りを忘れない…大丈夫、大丈夫。)
そう自分に言い聞かせながら
建物の中に入った。
アカデミーの中に入れば、活気溢れる子供達の声が耳に届いた。
それぞれ授業を教室で受けている。イキイキした表情で、先生方の授業を楽しんでいるみたいに見える。
今自分の様子と正反対の姿に場違いな気持ちで歩いていた。
ふと、教室の中を覗けば、
ある女の子が笑っている。
背格好が小さい時の自分に少し似ていた。
まっすぐに将来をキラキラした気持ちで見つめていたあの頃を、女の子に重ねて見つめていた。
私は暗部に憧れ自ら志願した。
小さい時の小さな思い出が
私の将来を決めた。
和気藹々と声が響く廊下を進めば、イルカ先生がいる校長室に着いた。
この若さで校長先生になったイルカ先生は、木の葉で、今一番の話題の的だ。
暗部に所属している私でさえ耳に入ってくるのだから、よっぽど異例だ。そこには、彼は人望が厚く皆に慕われている事を物語っている。